医療と司法

医療事故調査制度は始まったけれど

医療事故調査制度スタート「予期せぬ死亡」対象 - 47news(魚拓) 医療の安全確保を目的とした医療事故調査制度が始動。「診療に関連した予期せぬ死亡事案」が対象とされ、記録などに基づいて判断する医療機関の管理者の対応が問われる。制度の柱となる「院内…

医療事故調再び2

厚労省がかねてから推進していた医療事故調法案が今回提出の運びとなるようです。 医療事故の原因究明と再発防止に役立てるため、厚生労働省が法制化を目指す第三者機関「医療版事故調査委員会」について、自民党の社会保障制度特命委員会・厚生労働部会合同…

医療事故調再び

先日より厚労省の検討部会で議論していた医療事故調の案が一応まとまり,法案として提出されることになりそうです。 18日に開催された検討部会では、診療行為に関連した死亡事例はまず、医療機関が院内で原因究明し、遺族などがその調査結果に納得できない場…

尊厳死の法制化

尊厳死法制化で議連が骨子まとめる - 日経メディカル 骨子では、終末期や延命措置について定義。終末期を「全ての適切な治療を受けた場合であっても患者に回復の可能性がなく、かつ、死期が間近であると判定された状態」とした。延命措置は「傷病の治癒では…

医療過誤の定義とは?

もう数日前になりますが,山形大学病院で治療経過中に不幸な転機を辿った事例について報道されているようです。読んでいてどうにも違和感があったので少し調べてみたのですが,結局すっきりした答えは得られませんでした。それでも折角なのでエントリにまと…

イレッサ裁判に関する素朴な疑問

先日,イレッサの有害事象に関する国と製薬企業の責任を問う裁判の判決が大々的に報道されていました。当方の理解では,有害事象が起きた直接の責任ではなく,有害事象が起きうることを周知せず適切な治療選択の機会を奪った責任,というほうが近いようです…

内部調査が残した傷跡

東京女子医大での心臓手術における医療事故に関連して,内部調査を巡って争われていた民事訴訟が和解で決着したとの記事です。 東京女子医科大学病院(東京都新宿区)で2001年、心臓手術を受けた小6女児が死亡した医療事故をめぐり、機器の操作ミスが原…

当直は時間外労働2

県立奈良病院の産婦人科医が時間外労働への賃金支払いを求めた訴訟の続報です。 産婦人科医の夜間や休日の当直勤務が労働基準法で定められた「時間外手当」の支給対象になるかが争われた訴訟で、大阪高裁の紙浦健二裁判長は16日、対象になると判断して奈良…

初診時の転送義務と後知恵鑑定

報道によると,開業医が高次医療機関への転送を怠ったことによる損害賠償請求が認められたようです。 初診開業医に賠償命令髄膜炎の症状を見過ごされ、治療の遅れから転院先で死亡したとして、境港市の男性会社員(当時40歳)の両親が同市内のたけのうち診…

訃報

先ほどTwitter経由で知ったのですが,佐藤章先生が本日ご逝去されたとのことです。福島県立大野病院「事件」で先頭になって無罪を訴え,判決後も妊産婦死亡した方のご家族を支える募金活動を行われていました。当方は直接存じ上げないのですが,医療と司法の…

無過失補償制度への認識

ロハスメディカルでの井上清成弁護士と元厚労相政務官の村重直子氏が無過失補償制度について対談されていますが,とても興味深い議論でした。 公平さまで含めた意味での適正さで、できるだけ多くの人が公平に救済できるようにするのが大切でしょう。同じ皆保…

医療事故の再発防止と情報公開

医療ガバナンス学会に掲載された院内事故調査委員会に関する小松秀樹先生の論文です。 東京女子医大院内事故調査委員会:医師と弁護士の責任(その1) 東京女子医大院内事故調査委員会:医師と弁護士の責任(その2) 東京女子医大院内事故調査委員会:医師…

ADRの会議が開催されたようですが

第一回ADR機関連絡調整会議開催 - ロハス・メディカル 医療に関して裁判外の紛争解決(ADR)機関を運営している関係者を一堂に集めた厚生労働省主催の連絡調整会議が26日開催された。動きの止まっている医療事故調構想との関係にも注目が集まるが、事務局の…

医療ADRに関する会議

医療紛争において裁判という手続きは「真実」を究明するためのものではなく,当事者にとって納得のできる解決ができるとは限らない以上,それ以外の解決方法が求められるのは当然でしょう。そうしたなかで,厚労省で下記の会議が開催されるとのことです。 第…

日本医師会の医療事故調に関する答申

医療事故による死亡に対する責任のあり方について - 日本医師会 医療事故における責任問題検討委員会(PDF) 答申の骨子 1 医療事故が起きた後の法的責任を整理して、改革するよう提言する。改革の力点は、医療事故では制裁よりも原因究明と再発防止が何よりも…

山本病院事件の教訓

山本病院事件で医師の医療行為が犯罪として問われたことは大きな話題となりましたが,おそらく今後は過失致死として司法手続きが進められ,それに追随した行政処分が下されることになるのでしょう。報道された内容が事実だとすれば,当該医師は福祉行政を悪…

「真実」の究明8

大淀病院事件の地裁判決は原告の請求棄却とのことでした。なぜ原告の主張が退けられたという肝心な情報が報道記事から読み取れないのですが,こちらの記事で判決要旨のメモを公開されていて,医師側の過失および診療行為と死亡の因果関係はともに完全に否定…

ヒューマンエラーは裁けるか

ヒューマンエラーは裁けるか―安全で公正な文化を築くには作者: シドニーデッカー,芳賀繁出版社/メーカー: 東京大学出版会発売日: 2009/10/29メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 123回この商品を含むブログ (16件) を見る専門家(医療従事者や航空機のパイロ…

医療事故調大綱案の見直し

医療事故調、大綱案見直し 厚労政務官が意向表明 - 47news 厚生労働省の足立信也政務官は23日、2008年6月に同省が公表した医療事故の原因究明に当たる第三者組織「医療安全調査委員会」(仮称)設置法案の大綱案について「そのまま成案になるというこ…

院内事故調査の検証

東京医大、生体肝移植死で遺族に謝罪と3千万円 - 読売新聞 cache 東京医科大の生体肝移植問題 厚労相、調査を検討 - 朝日新聞 cache 東京医科大八王子医療センター:生体肝移植死 生存率、過大に説明 複数患者に - 毎日新聞 cache各紙の報道を読む限りでは…

医療行為と業務上過失致死

奈良診療報酬詐欺:山本被告と医師逮捕、患者出血死関連で - 毎日新聞 cache 県警は当初、生活保護受給者に心臓カテーテル手術をしたように装い、診療報酬をだまし取ったとする詐欺容疑で山本容疑者らを逮捕。その後、不必要な手術で男性を死亡させた疑いが…

パターナリズムと日本

先日の記事に対してリンクとTBを頂きました。大変参考になる指摘があったので,当方なりに考察してみました。 インフォームド・コンセントと日本 - 経済学101 インフォームド・コンセントが問題となるのは、患者と医師との間に情報の非対称があるからだが、…

刑事裁判と再発防止

福島県立大野病院「事件」裁判の経過を見聞きする中で当方が理解したのは,医療事故の責任を刑事訴訟によって追及することは「真実」を明らかにすることに必ずしも繋がらないし,まして再発防止のために有用とはいえない,ということでした。 福島・大野病院…

「医療ミス」というメディア用語2

医療事故:2歳児の静脈に空気注入 福島県立医大 - 毎日新聞 cache 会見した横山斉副病院長は医療ミスと認め、「原因を詳しく調べ、再発防止策を早急に検討したい」と陳謝した。 事故が起きてしまったことは当事者にとって不幸ですし,患者とそのご家族に対…

診療の録音と電子化

医師と患者のやり取りを録音 電子カルテと一括管理 富士通が開発 - 産経新聞 富士通は18日、病院での診療時に医師と患者とのやり取りを録音し、電子カルテと連動させて保存できるシステムを開発したことを明らかにした。医師が患者にどんな局面でどういう…

法廷における「事実」

訴訟に関する当方の知識は多分社会一般の水準ないしそれ以下と思われますのでおかしな点があればご指摘頂きたいのですが,裁判というのはそこで認定された「事実」に基づいて判断を下すところであり,提出されなかったりもしくは認定されなかった情報はなか…

非自然死体の死因究明法案

衆議院HPで臓器移植法案のソースを探していたらたまたま見つけたのですが,「非自然死体の死因等の究明の適正な実施に関する法律案」「法医科学研究所設置法案」というのも審議中なんですね。読んだ感じでは,前者が「非自然死」の死因を究明するために警察…

臓器移植法案について思うこと

先日衆議院で臓器移植法案のうちA案が可決されました。折衷案のD案ではなく4つの案のなかでは最も先鋭的なA案が可決されたのは当方には意外でした。衆議院の中のひとにとっては「臓器移植によって命が救われる」というメッセージが最も社会に受け入れられる…

当直は時間外労働

県立奈良病院の医師が時間外労働に対する賃金の支払いを求めた訴訟の地裁判決が昨日出ていました。救急の受け入れや緊急の対応を行っている当直は時間外労働であり割増賃金を支払うようにという判決とのことで,至極当然だと思います。 医師の当直勤務は「時…

東京女子医大事件高裁判決

東京女子医大事件高裁判決が報じられています。紫色の顔の友達を助けたいの佐藤先生には本当にお疲れ様でしたと申し上げたいです。 人工心肺担当医、二審も無罪 東京女子医大女児死亡事故 - 朝日新聞 判決は、死因について、脱血管の位置不良などにより、送…