医療崩壊

初診時の転送義務と後知恵鑑定

報道によると,開業医が高次医療機関への転送を怠ったことによる損害賠償請求が認められたようです。 初診開業医に賠償命令髄膜炎の症状を見過ごされ、治療の遅れから転院先で死亡したとして、境港市の男性会社員(当時40歳)の両親が同市内のたけのうち診…

国民の健康を守るために不可欠なもの

小児科医である中原先生の過労死について病院側に損害賠償を求める裁判は高裁の控訴審は棄却でしたが,今回最高裁では和解という結果になりました。「小児科医師中原利郎先生の過労死認定を支援する会」でその詳細が報告されています。和解条項より引用: 申…

政権政策の重箱の隅

参院選挙を控えて民主党が「政権政策」資料を公表しています。公示後に提示される正式なマニフェストの概要ということですが,大筋は同じになるのでしょう。税制改革といった主要政策に関してはきっと他でツッコミが入ると思われるので,当方は重箱の隅をつ…

ニセ医者騒動と医籍検索システム

岩手県立宮古病院に医師として着任予定の一宮輝美容疑者(44)が無資格だったとして医師法違反容疑で逮捕された事件で、インターネットで医師資格の有無を確認できる厚生労働省のデータベースの存在を病院が知らなかったことが11日、わかった。 ニセ女医…

連休前の対応

連休前にかかりつけで咳止め2週間分、「熱が出た時用」抗生物質1週間分を出されたという子どもが、 熱が下がらないと来院。いくら連休中休診でもこんな処方はNGだ。親もこんな処方に喜んだり安心したりしてはいけない。これは「念のため」ではなく「テキトー…

「SiCKO」は終わらない3

アメリカで医療保険改革法案が成立しました。日本のメディアではオバマ氏が強力なリーダーシップで困難な改革を成し遂げた,という論調です。成立までに相当苦労したことはたしかでしょう。単一支払い公的保険の導入は早々に消え去り,民間保険への加入を促…

心が限界集落

人口1000人規模の自治体に他県から移住して公立診療所で勤務しているという先生と個人的なお付き合いがあって,始めた当初の苦労話なども聞かせて頂いたのですが,やはりプライベートにあれこれと口を出されたり,コンビニ診療を要求されたりしたこともあっ…

政策による医療の崩壊

出産一時金支払制度によって出産費用の未払いがなくなれば医療機関側の負担が減るはずだったのに,2か月後の支払いまでの収入が途絶えてしまい,むしろ経営に打撃を受ける事態となっています。一経営者としては,2か月も運転資金が止められるなんてあまり想…

「コンビニ受診」とは何か

「コンビニ受診」は本当に医療崩壊の原因か? - JB PRESS 個人的には,医療崩壊の原因は医療に対して理念の上でも物理的にも実現不能な要求がされていることだと考えています。その意味では「コンビニ受診」はそうした問題を顕在化させたきっかけにすぎない…

タイムカードにお願い

病院勤務医もタイムカード 中医協、特別料金は見送り - 47news cache 中央社会保険医療協議会(中医協、厚生労働相の諮問機関)は27日、過重な労働が問題となっている病院勤務医の負担軽減策について、タイムカードで勤務時間を把握するなど労働環境整備の…

自治体病院の「赤字」

地域医療 ~再生への処方箋~作者: 伊関友伸出版社/メーカー: ぎょうせい発売日: 2009/12/16メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 34回この商品を含むブログ (12件) を見る元自治体職員であり,現在は自治体病院のマネジメントを研究されている伊関先生の最新…

スーパードクターの弊害

「スーパー名医」が医療を壊す (祥伝社新書187) (祥伝社新書 187)作者: 村田幸生出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2009/12/10メディア: 新書購入: 4人 クリック: 74回この商品を含むブログ (5件) を見る医療ドラマに登場する「名医」にツッコミを入れつつ,医…

奇跡の医療ドラマ

奇跡の医療革命!お母さんたちが立ち上がった! - 経済ドキュメンタリードラマ「ルビコンの決断」:テレビ東京 兵庫県立柏原病院をめぐり、医師不足で廃止の危機に立たされた小児科を地元の若い母親ら(佐藤藍子)が大運動を起こして、よみがえらせた物語。…

ある財務省官僚から見た医療崩壊

医療崩壊の真犯人 (PHP新書)作者: 村上正泰出版社/メーカー: PHP研究所発売日: 2009/10/16メディア: 新書購入: 16人 クリック: 134回この商品を含むブログ (9件) を見る著者は財務省から厚労省保険局に出向して「医療費の適正化」を担当していた元官僚とのこ…

社会保障の個人勘定

命の値段が高すぎる!―医療の貧困 (ちくま新書)作者: 永田宏出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2009/07メディア: 新書購入: 1人 クリック: 13回この商品を含むブログ (16件) を見るタイトルや「結局,医療のツケはサラリーマン」といった帯の煽り文句から受け…

所詮は他人事2

「我々の業界ではこれぐらいのこと当然のようにやっているのにお前たちができないなんて文句を言うな」というよく見受けられる主張は意外と共感を集めたりするので厄介です。業界が違うのに同じ理屈が通用するとは限らないという反論はもちろんありますが,…

「SiCKO」は終わらない

オバマ米大統領が医療保険改革で議会演説、早急な対応求める - ロイター 無保険者をなくすという公約を果たすために医療保険改革に取り組んでいるオバマ大統領ですが,相当の抵抗に遭って苦労しているようです。これだけ大々的なアピールをするのはそれだけ…

救命病棟24時

はじめは「時をかける少女」を見ていたのですが,途中でチャンネル権が移行して「救命病棟」に変更されてしまいました。そんな成り行きで第1話を見たのですが,救急外来から離れてだいぶ経つ当方としては,医療的なツッコミは他の先生方にお任せしたいと思い…

所詮は他人事2

「病院勤務医、本当に逃げ出すほど忙しい?」−日医・藤原常任理事 - CBニュース 藤原委員は、中医協の検証部会が昨年度に実施した調査で明らかになった、医師1人が1日に診る外来診察患者数が平均28.0人(医師責任者は32.6人)、担当入院患者数が10.9人、1か…

診療の録音と電子化

医師と患者のやり取りを録音 電子カルテと一括管理 富士通が開発 - 産経新聞 富士通は18日、病院での診療時に医師と患者とのやり取りを録音し、電子カルテと連動させて保存できるシステムを開発したことを明らかにした。医師が患者にどんな局面でどういう…

新たなる利権の誕生

ssd先生のところで紹介されていた読売新聞の記事より引用。医師確保票になる - 読売新聞 国会議員が医師不足に悩む地元自治体のため、医師確保に奔走するケースが出ている。医師の人数が限られる県内では確保が難しいため、公立病院を抱える自治体側も、東京…

所詮は他人事

地元医師会のかなり高齢の先生が「医師が足りないところは強制的に行かせるべきだって新聞に書いてあったけど,確かにその通りだ」みたいなことを仰っていたのを聞いてしまいました。自分は絶対に無関係だと確信しているからこその台詞でしょうけど,そのあ…

読売新聞医療情報部の実力

自称「医療の読売」こと読売新聞医療情報部が取材したデータの数々をまとめた一冊です。数字でみるニッポンの医療 (講談社現代新書)作者: 読売新聞医療情報部出版社/メーカー: 講談社発売日: 2008/11/19メディア: 新書購入: 5人 クリック: 107回この商品を含…

病院PFI成功に必要な5つの条件

高知医療センター PFI解消協議へ - 読売新聞 民間の資金やノウハウを活用するPFI方式を全国の医療機関で初めて導入した高知医療センター(高知市)を運営する県・高知市病院企業団は16日、赤字体質の改善を目的に、経営業務を委託している特定目的会…

当直は時間外労働

県立奈良病院の医師が時間外労働に対する賃金の支払いを求めた訴訟の地裁判決が昨日出ていました。救急の受け入れや緊急の対応を行っている当直は時間外労働であり割増賃金を支払うようにという判決とのことで,至極当然だと思います。 医師の当直勤務は「時…

医師「宿直」問題というパンドラの箱

いつも拝見している産科医療のこれからで参議院厚生労働委員会での質疑の模様が紹介されていました。最後の方から引用(一部体裁を変更)。 梅村聡議員(51:01) (前略)これによることでパンドラの箱をあけることになるかもしれませんけれど、いままさにここに切…

医療志民の会

医療志民の会 発足記念シンポジウム -ロハスメディカル これはぜひ出席してみたいと思っていたのですが時間的に都合がつかずに断念。参加された方々からの報告のエントリもあちこちで立てられるでしょうから,今回はそれらを読んで我慢することにします。小…

東京都の迅速な対応

愛育病院の続報です。「愛育病院は厚労省と調整へ」−東京都が見解 - ロハスメディカル 恩賜財団母子愛育会・愛育病院(中林正雄院長)が総合周産期母子医療センターの指定を返上するとの意向を東京都に伝えていた問題で、東京都福祉保健局医療政策部の室井豊…

愛育病院に労基署が是正勧告

ロハスメディカルに速報が出てましたが,話の成り行き次第では大事になりそうな予感がします。 東京都港区の恩師財団母子愛育会・愛育病院(中林正雄院長)が今月、所管の三田労働基準監督署から、医師など職員の労働条件に関して、36協定を締結していないこ…

研修医に診てほしくないというひと

夜間救急外来で研修医が対応したことに対して不満をあからさまにするひとの話題*1が最近あちこちで取り上げられてました。医師の手薄な体制上そうせざるをえない医療機関側の事情と,自分だけは経験のある医師に診てほしいという患者さん側の意識のあいだに…