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混合診療解禁を巡る議論2

このところ「混合診療」の話題がメディアで取り上げられるようになりました。先日は安倍首相自ら保険外診療と保険診療が併用可能な制度を新設するように指示を出しています*1。 「保険診療と保険外診療を同時に受けた場合にも保険診療分の診療報酬が支払われ…

かかりつけ医と在宅医療

前回からだいぶ間隔があいてしまいました。在宅関連の診療報酬改定について,とりあえず新年度を控えた現時点での雑感を書き残しておきます。同一建物への訪問診療が大幅に引き下げられたことでこれまでの在宅主治医が撤収してしまい,有料老人ホームやサー…

「医療否定」は患者にとって幸せか

「医療否定」は患者にとって幸せか(祥伝社新書)作者: 村田幸生出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2012/12/03メディア: 新書この商品を含むブログ (1件) を見る以前当ブログでも紹介(■スーパードクターの弊害)した『「スーパー名医」が医療を壊す』は目の付け所…

二年目の春

以下は個人情報につき事実の一部を脚色しています。昨年の初め頃,震災と津波により長年住んでいた家を失った高齢の女性が当院を受診されました。もともと独り暮らしでしたが,当地に嫁いだ娘さんが仮設住宅での生活を心配されて転居することになり,これま…

尊厳死と医療費

直接見ていないのですが,昨夜報道番組で石原伸晃氏が尊厳死について発言していたようです。 この文脈で何がどう「誤解」なのか? - lessorの日記 以前にも胃瘻による経腸栄養を「エイリアン」と表現したことを併せると,どうも延命治療に対してかなり否定的…

意志決定における専門家の責任

某所での議論を見て思ったことですが…。意志決定は,対象が何かの専門領域に関することであっても最終的に当事者が行うというのは確かにその通りです。専門家の立場としては,当事者がメリット・デメリットについて検討して出した結論であれば,それが一般的…

家族の道義的責任と社会サービス

経済的余裕があるのに親族が生活保護を受給されていた,と糾弾されるタレントがこの週末話題になっていました。報道を見る限り,当該するケースがそもそも何かのルールに違反しているかは明らかではなく,どうも扶養する能力があるのにそれを果たさなかった…

胃瘻造設と意思決定2

少し前の話になりますが,野党幹事長が胃瘻からの経腸栄養をおこなっている光景を「エイリアン」と表現したことが報道されました。いつもの如くマスメディアの編集を経た発言をそのまま受け取るわけにはいきませんが,好意的に解釈すれば,そうした実状をよ…

尊厳死の法制化

尊厳死法制化で議連が骨子まとめる - 日経メディカル 骨子では、終末期や延命措置について定義。終末期を「全ての適切な治療を受けた場合であっても患者に回復の可能性がなく、かつ、死期が間近であると判定された状態」とした。延命措置は「傷病の治癒では…

在宅診療と診療報酬改定

来年は医療と介護の診療報酬同時改定ということで現在議論が行われているところです。財源に関してはプラス改定という意見が早々に下火となり,争点はすでにプラスマイナスゼロかマイナスか,というあたりになっているようです。まあ震災復興で金がないから…

混合診療解禁を巡る議論

混合診療禁止の法的根拠について争われていた裁判は,最終的に最高裁で「法的根拠あり」の判断が下されたようです。 健康保険法に混合診療を禁じる規定はないが、国は法解釈で禁止してきた。その一方で、1984年の同法改正以降、特定の高度先進医療に限っ…

震災と社会保障改革

民主党内で社会保障改革について昨年来議論が続いています。結局のところは必要な財源をどのように調達するのかが争点になるのでしょうけど,ただでさえ議論の着地点を探すのが難しいのに,震災による経済的損失を無視するわけにはいきませんから,ますます…

いま自分がなすべきことを考える

3月11日の地震およびそれ以降のさまざまな災害に関して,自分が何を語るべきなのかいまだ分からない所もありますが,やはり個人として考えるところを書き残しておきます。このエントリに関しては,誰かにこうしろという意図はありません。あくまで自分自身の…

内部調査が残した傷跡

東京女子医大での心臓手術における医療事故に関連して,内部調査を巡って争われていた民事訴訟が和解で決着したとの記事です。 東京女子医科大学病院(東京都新宿区)で2001年、心臓手術を受けた小6女児が死亡した医療事故をめぐり、機器の操作ミスが原…

やさしさと冷静さと

ホメオパシーに関する報道に関する議論のなかで当方の思いつく程度のことは既に出尽くした感もありますが,せっかくなのでここ数日のあいだに呟いたことがタイムラインの彼方に消え去る前にまとめてみました。読むべきところはあまりないかと思いますが,あ…

後期高齢者医療制度を廃止したあとは2

猛暑のため脳の活動が低下気味で140字以上の文章を書くのが困難となり,しばらくこちらを更新できませんでした。なんとか涼しい時間帯を見つけてせめて週に一回くらいはエントリを書きたいと思っています。 さて,後期高齢者医療制度廃止という公約に沿って…

胃瘻造設と意思決定

昨夜のETV特集で胃瘻による経腸栄養の問題が取り上げられていました。 食べなくても生きられる 〜胃ろうの功と罪〜 男女を合わせた平均寿命が80歳を越え、日本は世界最高の長寿国になった。その理由の1つが、欧米とは異なり積極的な延命治療が行われている…

意義ある議論のための手法

ひとはそれぞれ立つ場所によって同じ対象であっても見えかたは異なるわけで,そのまま議論しようとしても話がかみ合わないというのは当然のことです。無理矢理結論を出そうとすればどちらかが勝つまで泥沼の戦いが続くことになり,お互いに不毛なことです。…

不正な医療への取り締まりとインセンティブ

医療制度を悪用して不当な利益をあげる事例がしばしば取り上げられます。医療に期待される社会的機能を思えば,患者さんや低所得層の方をターゲットにするということに対して怒りを覚えるのも当然でしょう。ではどうすればそうした行為が根絶できるのかとい…

訃報

先ほどTwitter経由で知ったのですが,佐藤章先生が本日ご逝去されたとのことです。福島県立大野病院「事件」で先頭になって無罪を訴え,判決後も妊産婦死亡した方のご家族を支える募金活動を行われていました。当方は直接存じ上げないのですが,医療と司法の…

規制緩和と社会保障

昼休みにふと思いついたことですが…国際的に比較すると,日本の経済に対する政府の財政規模は小さい,ということらしいです。一方で政府による規制が厳しい国であることもしばしば指摘されます。これらを前提にして乱暴にまとめると日本の場合「口は出すけど…

国民負担についての争点

民主党は鳩山氏が降板し新たな党首を立てて参院選挙に臨むことになりました。次期党首と目される菅財務大臣は消費税増税を主張していましたから,持論が変わらければ*1マニフェストもそうなるのでしょう。方針としては「高負担高福祉」に舵を切ることになり…

失って分かったこと

大病を患ったときに,これまで長い間関心を持たなかった健康であることの大切さに気づくいい機会だ,なんて言われることがあります。もちろん健康の大切さを理解するために病気になるわけではなく,失ってしまったものを受け入れるためのひとつの考え方だし…

政争の具

緊急事態だから責任追及している場合ではないというのは分かるし,本筋とは離れた方向へ議論をミスリーディングすることで政治的に有利になることを意図しているのであれば,災害を政争の具にしていると言われても仕方ないでしょう。とはいえ,今やるべきこ…

改めて臨床研修制度を考えてみる

2004年から始まった臨床研修制度に対する評価は,いまだに定まっていないように思えます。予想された効果あるいは欠点がじっさいにどうなったのかは,こうだろうという理屈とはまた別に,できるだけ実証的に評価するべきなんでしょう。もちろん評価しようと…

議論の前提

一方にとっては当然の前提条件であっても相手にとってはそうでない状況で議論を続けていても,双方にとって得るものはあまりなさそうです。事実かどうかについては白黒つける余地もあるでしょうけど,その事実をもとにした価値判断について決定的な相違があ…

事業仕分けと社会保障政策

あくまで報道を踏まえた個人的見解ですが,事業仕分けによってこれまで手付かずだった公的機関の運営が見直される契機になるとはいえ(その効果を見極めるにはある程度の時間がかかると思われます),当初謳っていた原資が捻出できない時点で,現政権において…

「かかりつけ医」政策への個人的見解

患者さんが専門医を直接受診することで負担がかかっているので「かかりつけ医」「総合医」を育成してそちらを受診するようにすればいいという見識があって,確かにうまくいけばよさそうな話に聞こえるし,だからこそ厚生労働省も学術団体も日本医師会も(それ…

日本医師会と選挙制度

日本医師会の新会長が会長選挙を直接投票制にしようと仰っているようです。これまでは会長を選出する代議員をさらに選出する市町村医師会長を形式的な挙手で選出するといった感じで,間接選挙と呼ぶのも憚られる状態でした。また会長に直接投票できるクラス…

後期高齢者医療制度を廃止したあとは

後期高齢者医療制度というのは医療リスクの高い集団を別勘定にしたうえで診療報酬を包括払いにして総額を抑制するという意図だったと理解していますが,結局は政治的に受け入れられず廃止となりました。もしそうならなくても医療費抑制が目算通りに運ばずに…

圧力団体という幻想

いまさら日本医師会内部で政権交代が起こっても社会にはなんのインパクトもないし,たいしたニュースにならないだろうと思っていたのですが,けっこう大きく取り上げられていたのは意外でした。そもそも自前で推薦した候補も当選させる力もないわけで,医師…

日本医師会も政権交代

本日行われた日本医師会の会長選挙は,原中氏が当選した模様。周知の通り与党となった民主党に近い方です。個人的には,近い将来民主党とか自民党といった枠組みそのものが大きく変わる可能性だってあるわけで,現時点の特定政党への影響力なんてどれだけ意…

医師会と行政

個人が行政と個別に交渉するというのは負担が大きいし条件も個人にとって不利になりがちですから,所属している地域の医師会がこれを代行してくれるのはひとつのメリットといえます。そのかわりに,医師会運営に関わる雑用や,場合によっては行政からお願い…

山本病院事件の教訓

山本病院事件で医師の医療行為が犯罪として問われたことは大きな話題となりましたが,おそらく今後は過失致死として司法手続きが進められ,それに追随した行政処分が下されることになるのでしょう。報道された内容が事実だとすれば,当該医師は福祉行政を悪…

許容できるプラセボ

外来を受診する患者さんが医療者に提示する訴えは,必ずしも実際に抱えている問題と一致するとは限りません。よくあるのは「具合が悪いから薬を出してほしい」と要求していても,医療者からみると薬の投与ではなく,それ以外の対処をすべきであると思われる…

分断政策への対応

患者本位と称する政策が,医療側への負担を強いるだけでなく患者さんにとってデメリットのほうが大きくなってしまう,という現象がしばしば見受けられます。これに対して医療者側の負担が重いことを声高に主張することにより,患者さんに対する「医療機関=利…

医療行為と業務上過失致死

奈良診療報酬詐欺:山本被告と医師逮捕、患者出血死関連で - 毎日新聞 cache 県警は当初、生活保護受給者に心臓カテーテル手術をしたように装い、診療報酬をだまし取ったとする詐欺容疑で山本容疑者らを逮捕。その後、不必要な手術で男性を死亡させた疑いが…

権威に対する態度について

世の中に起きていることや社会のしくみについて個人がそれぞれ独力で知識を得て理解したうえで判断するなんていうことはあまりにも非効率的だし,それ以前に物理的時間的制約から不可能です。したがって,それぞれの分野にいる専門家がこれまでの知見を集約…

事実とストーリーは対立しない

客観的な事実や証拠を重視することと,患者さんにとっての主観・ストーリーを重視することを対立した概念と捉えて,後者がより重要であるという主張があるようです。患者さんが持つご自身の病気についてのストーリーを重視するという手法はたしかにあります…

後知恵批判への反論

WHOが製薬会社と結託してパンデミックを煽ったとの批判があるらしく,それに対する反論が公式サイトに掲載されていました。 WHO、製薬会社と癒着?新型インフルで欧州会議が調査 - 朝日新聞 同会議保健衛生委員会の委員長で、感染症を専門とするドイツ人…

新刊回収の真犯人

『新型インフル禍の真犯人 告発! 死の官僚』回収に関するお詫びとご報告 - 講談社 cache 出版部としては、新型インフルエンザの実態を国民にできるだけ早く伝えるため、緊急出版することにし、そのため厚生労働省医系技官の著者・村重直子氏からお話をおう…

貧困への公的助成

貧困への公的助成を行うさいに,現金で渡すと必要な生活費等ではなく娯楽やアルコール購入に使われてしまうという問題があり,したがって一定の目的以外に使用できない工夫が必要であるという主張があります。確かに公的支出が不適切に使われているのは税を…

白衣を脱いだ医師

「脱・白衣」広がる 子の緊張和らげ、清潔な服で診察 - 朝日新聞 医者のトレードマークとも言える白衣を診察室で着ない医師が、小児科や心療内科を中心に増えている。患者の緊張感を和らげる効果や動きやすさ、衛生面など狙いは様々。中には「患者中心の医療…

自己決定とパターナリズムのあいだ

総合診療誌JIM1月号に掲載されていた内田樹氏と岩田健太郎氏の対談を読みました。冒頭から「インフォームド・コンセントはダメである」と断言してしまうあたり,医学雑誌としてはかなり刺激的です。内田氏によればインフォームド・コンセントという概念その…

実態と調査結果の乖離

実態としてルールが遵守されていない,むしろ遵守していたらシステムが成立しないような状況において,「ルールは遵守されるべきである」という建前によって実状把握が妨げられたり,もし把握しても公にして改善に結びつけることができないことが多々あると…

技術的な話をするなと言われても…

制度をよくしていこうという話をしているときには,その制度を運用していくうえでの技術論に言及しないわけにはいかないと思うのですがどうでしょうか。そういえば医療訴訟の問題を議論しているときに,医学的な話をされても分からないという物言いがついた…

事業仕分けの極個人的感想

事業仕分けの様子をいろいろな媒体で観察していましたが,結局のところあれは例年予算編成の際に行われている「財務省による各省庁の評定」であって,今回公開されているのはそのうち比較的差し障りのない部分なんだろうと想像します。もっとも差し障りがな…

報道ステーションを見てみました

足立政務官が出演するとのことで報道ステーションを見てみました。 新型インフルエンザの流行が進み、ワクチンの接種を多くの人が望んでいるなか、ワクチンの接種回数に関し、一部の専門家と国の意見が分かれている。専門家の意見交換会(16日)では、20…

医師優遇税制と言っても

事業税優遇廃止案が浮上=開業医の診療報酬−来年度税制改正、政府・与党 - 時事通信 2010年度税制改正をめぐり、開業医の報酬に対する個人事業税(地方税)の非課税措置を廃止する案が政府・与党内に浮上してきた。政府税制調査会(会長・藤井裕久財務相…

医療の限界と代替療法

現時点での医療レベルで積極的な治療ができない状態の患者さんに対して,作用機序が不明でエビデンスに乏しい代替療法であっても有意義であるという主張は以前からよく耳にするところです。ただ積極的な治療ができない場合に行われる対症療法に関しても作用…