最近の若い研究者は


若い研究者は世間知らず? 文科省の意識調査 朝日新聞 2007年2月8日


社会的に発言力のあるひとが若者に苦言を呈するという行為は古今東西みられるものです(関係ないですがエジプトの壁画云々の話は本当なんでしょうか?)。いわゆる「研究者」は世間離れして常識がないという世間一般の先入観もあるかも知れません。こうした記事が掲載される背景にはそういう事情があるのではないかと思われます。こういう記事を書いたりするひとたちはいわゆる文系に属するのでしょうけれど,理系の研究者を必要以上に貶めようとする悪意を感じると言ったら勘ぐりすぎでしょうか。

 20代前半〜30代前半の若手研究者の能力15項目について尋ねたところ、高い評価が目立ったのは「専門分野の知識」。「高い」が48.8%、「非常に高い」が6.7%あった。

 しかし、「社会常識」について尋ねたところ、「低い」が26.5%で「非常に低い」が5.6%と、辛口評価が目立った。一方で「非常に高い」「高い」という評価はそれぞれ1.1%、9.1%。

この数字だけから若い研究者は世間知らずである,少なくとも世間知らずと周囲から認識されているという結論を導くのは無理がありすぎです。そうであると主張するためには若い研究者以外の対照群との比較が必要です。文部科学省の担当者が言うとおり,

若者が常識に欠けるとみられてしまうのは、研究の世界に限ったことではなく一般的なことなのかもしれません

という可能性を否定しなければならないからです。合理的に考えることが出来る人間であればこのコメントではっと気付いて記事を没にするはずですが,驚いたことに各紙で取り上げられているようです。あるある大事典を巡る報道では実験結果の捏造を行ったことに関しては袋だたき状態でしたが,実験結果から結論を導く過程の論理がめちゃくちゃであることに言及した報道機関はなかったように記憶しています。捏造があろうとなかろうとあの番組はでたらめだったのです。結局自分の脳を使って考えてみるということが大事だと思います。


こういう理屈を述べるとやはり理系は変わり者だという偏見を助長するのかも知れませんが。

以下は記事本文。

若い研究者は世間知らず? 文科省の意識調査
2007年02月08日11時30分

 最近の若い研究者は常識がない?――文部科学省が大学や企業に勤める理系の研究者を中心にアンケートしたところ、若手研究者の3割前後が、社会常識や一般教養に欠けるというイメージで見られていることがわかった。その一方で、専門分野の知識は豊富とみられるという。

 調査は昨年、2000人を対象に実施し、1024人から回答があった。有効回答率は51.2%。

 20代前半〜30代前半の若手研究者の能力15項目について尋ねたところ、高い評価が目立ったのは「専門分野の知識」。「高い」が48.8%、「非常に高い」が6.7%あった。

 しかし、「社会常識」について尋ねたところ、「低い」が26.5%で「非常に低い」が5.6%と、辛口評価が目立った。一方で「非常に高い」「高い」という評価はそれぞれ1.1%、9.1%。

 「一般教養」も評価は低く、やはり「低い」「非常に低い」が23.5%、4.1%あった。「非常に高い」「高い」は0.9%、12.5%だけだった。

 そのほか「課題設定能力」「創造性」「国際性」に対する評価も低かった。

 アンケートの対象は論文データベースから、年齢や専門分野などを無作為に選んだため、若手の回答も入っている。02年度には若手を指導するベテラン研究者に同様の質問をしたが、同じような結果が出たという。

 文科省の担当者は「若者が常識に欠けるとみられてしまうのは、研究の世界に限ったことではなく一般的なことなのかもしれません」といっている。