医師の過労死


本日の北海道新聞朝刊一面に「小児科医死亡は過労死」の大きな見出しがありました。痛ましい話です。これが労災でなければいったい何なのかという話ですが,労災認定以前の問題として行政が過重な労働時間を放置してきた経緯があるわけです。

 道北の公立病院などに勤務していた小児科医の男性=当時(31)=が突然死したのは、月百時間を超す時間外労働による過労死だとして、遺族が旭川労働基準監督署に労災を申請していた問題で、北海道労働局は二十二日までに、労災と認定し、遺族補償年金の支給を決めた。医師の過労死認定は全国的にも極めて珍しい。医師不足の原因の一つとされる勤務医の過酷な労働実態の見直しを求める声が、さらに強まりそうだ。

(cache)小児科医死亡は過労死 時間外、月100時間超 道労働局認定


蛇足ですが,今朝本紙を読んだあとに昼休みにもう一度Webで記事を読み返すと,なんだか記事が短い気がしたので確認してみると以下の文章がWebには転載されていないことが分かりました。手打ちで引用します。

 労災認定について,遺族は「二度と同じような悲劇を起こしてほしくない。過労死を減らすきっかけになれば」と話している。

 医師の労災申請を支援する「研修医・医師の労働条件を改善する会」の今中智之理事(大阪)の話では,同会が把握している医師の過労死認定は全国でも過去数例しかない。

この一節をあえて転載しなかった意図はどこにあるのか疑問です。この報道を受けて今後労働条件の改善が当然議論される筈。それを踏まえれば世論を喚起するにはいずれも重要な取材内容でしょう。報道機関はことあるごとに遺族のインタビューを取り上げて必要以上に報道内容を情緒的にしてきた筈なのに今回に限ってはよそよそしさを感じます。


社会面にも関連記事があって,これもWebに見あたりません。仕方がないので手打ちでテキストに起こします。

小児科医を過労死認定 医師の負担深刻さを増す

 北海道労働局が「過重の負荷があった」として,労災と認定した男性医師=当時(31)=の突然死。男性がしていたような長時間労働が勤務医を退職に追い込み,残った医師の負担がさらに重くなる。男性の死から3年余り。地域医療を巡る「長時間労働-退職-医師不足」という悪循環はさらに深刻化している。
 「休みは月に1,2日。『僕が死んだら働きすぎだから』ってよく冗談で言っていました」。男性の家族はこう振り返る。
 男性は勤務していた道北の公立病院で,一市三町の小児救急を他の医師2人とともに支えていた。当時,小児科の救急外来には毎晩平均5人の患者があった。男性は突然死する前日の夜も,呼び出しの電話に飛び起きた。体調を心配していた家族が止める間もなく,5分後,病院に向かって走り出していた。
 当時の上司は「患者数に比べ医師が足りなかった」と話す。
 日本医療労働組合連合会が勤務医千人を対象に行った調査でも,1か月の休みの平均は3.3日。回答者の4割以上が1日の労働が12時間を超えると答えた。過労を原因に「辞めたい」と思ったことがある医師も54.5%に上った。
 男性が働いていた公立病院も4月,小児科病棟を閉鎖する。医師不足を理由に,旭川医大が医師派遣を打ち切るためだ。勤務医の労働環境を改善しなければ,地域医療の崩壊も止まらない。
(北海道新聞 2007年2月23日37面より)

最後の一文が全てだと思います。この文章があるのとないのでは読者の受ける印象はかなり違うでしょう。繰り返しますが,あえて転載しなかった意図はどこにあるのでしょうか。道外の人間には知られたくないとか?