医療記事満載
というわけで帰宅してからGoogleReaderをチェックしてみると更新が160以上も。ざっと目を通すだけでずいぶん時間がかかってしまいました。特に福島大野病院事件第二回公判関連は既に詳細なリポートが公開され,論評も各所でなされていました。専門外である当方としては素人以上の議論は出来そうにありません。
miosy先生の読影室の片隅から - 福島県立大野病院事件 第2回公判では画像診断の側面からコメントされていました。これなら少しは自分の専門と関係ありそうです。孫引きになりますが,一部引用します。
検察 豊富な血流を認めたときに、癒着胎盤の可能性は、高くなるのか低くなるのか。
証人 私は症例をそうもっていないのでわからないです。
検察 ただ、証人のお考えとして、カラードプラで見たときに、高めるのかどうかお答えください。
証人 高めるかどうかわかりません、診断の一助にはなるでしょうか。
検察 カルテの医師記録 12月6日を示します。(検察はカルテ本物をもっている)これは患者さんの検査の写真です。16号証に写しがあります。この下の写真はカラードプラ検査です。これをご診断いただいてわかりますか?写真上は血流についてはどのようにご覧になりますか?
証人 カラードプラは、カラーでみないと、白黒のコピーではではわかりませんが(当たり前である。カラードプラはカラーで血流を示す機会なのだから)、白いところが血流です。
検察 質問したのは、下の写真の、白い細長いところ、この部分が血流だろうと見受けられると。よろしいですか?
証人 はい。
検察 この写真から、血流が豊富な印象なのか?
証人 一枚の写真をみてもね・・・ (一枚の写真で血流が豊富か診断できるわけない)
弁護 豊富というのは、何を基準に豊富といわれているのか。そういうあいまいな質問では答えにくい。
裁判官 いや、まあ証人は経験とおっしゃっているんだから、まあ。
弁護士 でしたら、経験でカラードプラを癒着胎盤でしたことがあるか? とか、そういうふうに質問をしたら。
検察 今のは疑義か?
裁判 では、これで判断できますか?答えてください。
証人 無理です。
miosy先生もコメントされている通り,他人の施行した超音波検査を,特に静止画で判断するのは無理があります。公判を維持するために駆使されるありとあらゆる作戦の一つに過ぎないし,この証言だけで判決が左右される訳でもないのは判ります。ただこの程度の理解であれば,もし遺族が「真実を知りたい」と望んでいたとしても,医療裁判がそれに応えるのは困難だと思います。
もう一つ,北海道新聞の「医師の地方勤務、義務付け不可欠 札幌で医療考えるつどい」(cache)という記事。peak1839先生の五里夢中於札幌菊水-医師の地方勤務義務付け不可欠で教えて頂きました。
札医大の山本和利教授は「医師や医学生は地域に背を向けている。(地方勤務を)義務付けないと、ここまで壊れてしまったものはどうにもならない」などと訴えた。
山本先生は地域医療総合医学講座の教授をされている訳ですが,その講座は医局員があまりに少なく実際は地域医療にはほとんど貢献されていないと聞いています。「医師や医学生は地域に背を向けている」というのは実感としてよくお分かりなのでしょう。「義務付ける」という発言が何を意図しているのかこの記事からだけでは読み取れませんが,医療の実情を無視した短絡的な義務化ではますます背を向けられるだけと思われます。