開業医も動員


脱出後は当直やオンコールで起こされなくなったのは有り難いのですが,未だに救急車のサイレンが近くで聞こえると動悸を自覚します。救急車が走っていると言うことはその先で誰かが呼び出されているわけで,そう簡単に無関心にはなれません。奴隷根性が抜け切れていないのか,もしくはPTSDの一種なのかもしれませんが。

ところが将来は開業医といえども夜間救急と無関係ではいられないかも知れない,という報道です。

今の医療制度では、保険証があればどの医療機関でも受診でき、一方で時間外を受け付けない診療所もあるため、本来は高度な治療を担う大病院に一般の外来患者が数多く訪れて勤務医の負担が増し、医師不足に拍車をかけています。さらに急速な高齢化に伴ってお年寄りの患者が大幅に増えることも予想されるため、厚生労働省は、医療機関の役割分担を抜本的に見直す方針を固めました。具体的には、地域の拠点となる大病院は原則として入院治療と専門の外来のみを行い、診療所は時間外の診療や往診を受け持つとしています。また開業医についても、休日や夜間に地域の救急センターに交代で出勤することや、時間外でも携帯電話で連絡がとれることなどを求めています。地域の拠点病院からへき地の診療所に医師を派遣する新しい仕組みも作り、医師の確保を図るとしています。厚生労働省は一連の改革を実現するため、関係する機関などと話し合いながら診療報酬や医療制度の見直しに向けて、検討を始めることにしています。

医療機関の役割分担見直しへ NHKニュース 4月13日 4時29分

診療所で勤務を始めたその週にタイミングが良すぎではありますが,以前から予兆はありました。4月初頭に柳沢厚生労働大臣と唐沢日医会長の会談の席で,厚労省側から

地域医療における医師確保等の問題に鑑み、勤務医の負担を軽減し、地域医療連携を推進するためには、開業医の果たすべき役割が重要である。具体的には、開業医の休日・夜間救急センターへの交代勤務、診療所のグループ化、研修体制の構築―などの取り組みが必要であり、地域医師会の協力が不可欠である

日医白クマ通信 No.628 2007年4月5日

という要望が伝えられているのです。医療ブログ界隈では同じ会談での研修医の僻地義務化発言が大きく取り上げられてはいましたが,そちらの話題の方が勤務医にとって関心が高いのは当然でしょう。むしろ勤務医にしてみれば自分たちの激務の一部でも負担してくれたら有り難いと考えるでしょうし,個人的には貢献できることがあればしたいという思いもあります。ただ一方では自分の診療所にとって自分の代わりになる医師はいないわけで,たとえば救急外来で勤務した翌日の業務に対する補償がないと厳しいけれど,きっとそんな補償はないんだろうなとか考えてしまいます。

厚生労働省にしてみれば以前から主張している「医師偏在論」と合致する方針でもあり,何より開業医と勤務医を分断してただでさえ弱体化している日本医師会にダメージを与えることができるという戦略なのかも知れません。医師会もこれに反対しなかったらA会員さえも逃げ出して崩壊しますからさすがに抵抗するとは思いますが,どうなることやら。