開業医も動員2


開業医を時間外診療に動員する件ですが,その後続報がありました。まずはアサヒコム4/14の記事から。

厚生労働省は13日、今後の医療政策の方向性として、大病院や専門病院は一般的な診察はせずに入院と専門的な外来に特化する一方、開業医に対しては休日・夜間の診療や患者の自宅を訪れる訪問診療を求める報告書をまとめた。病院と開業医の役割分担を明示することで、勤務医の過度な負担を軽減するとともに、在宅医療への移行をはかるのが狙いだ。今後、診療報酬の見直しなどを通じて実現を目指す。

魚拓:「大病院、一般外来なし」 役割分担促す 厚労省方針 - asahi.com

軽症の一般外来は病院から診療所にという主張は以前からされていましたが,病院指向の患者の方々をどうすれば近所の診療所に誘導するのか,というアクセス制限の問題があったわけです。診療報酬の見直しを通してこれを実現するということは,相対的に診療所の患者負担を軽減するということになるのでしょうか。あとは例のかかりつけ医制度ですか。


そして本日m3で拾った共同通信の記事。

開業医は日曜や夜も診療を 携帯で連絡取れるように 今後の医療政策で厚労省


 厚生労働省は13日、開業医に対し地域で果たすべき役割として、日曜日や祝日、夜間も診療することなどを求めた今後の医療政策に関する報告書案をまとめた。

 2030年には75歳以上の後期高齢者が、現在の2倍近い2260万人に増えるとみられており、現在は時間外や日曜・夜間の診療を行っている診療所が減少するなど身近な地域での医療に不安があると問題提起。

 このため、開業医について(1)地域で在宅当番医制のネットワークを構築、日曜日など救急センターに交代勤務(2)いつでも携帯電話で連絡が取れる(3)午前中は外来、午後は往診、訪問診療(4)みとりまで行う在宅療養支援診療所を含めグループによる対応で24時間体制の確保―といった取り組みが期待されるべきだと提言している。

 病院と診療所の役割分担については、診療所は1次的な地域医療の窓口として患者の生活を支えながら、急な発症への対応を診療所同士や病院との連携で実現。急性期の病院は、質の高い入院医療が24時間提供されるよう原則、入院治療と専門的な外来診療のみとする。

 報告書案は、都道府県が08年度までに定める医療計画づくりに役立てるようまとめた。


共同通信社 07/04/16

厚生労働省としても開業医に自分の病院・医院を放り出して働かせる法的根拠がないことぐらい分かっているはずです。予想としては医師会からのトップダウン方式。勤務医を労働基準法無視で勤務させるときと同じく「強制はしていないが自主的に勤務した」論法です。これにしても最終的には脱会者続出で医師会が崩壊する以外の結果は予測できないのですが。

従来「医師はすべて高所得」という誤解をなかば利用してきた厚生労働省が,勤務医の過酷な労働環境が多大な努力と犠牲の末にようやく世間で認識されたのを見て取り,次は開業医に矛先を向けたようにも見えます。一方,収入ではなくQOLの改善のために勤務医を辞めて開業しようという医師にとっても「開業したのに24時間オンコール」では精神的ダメージが大きいでしょう。もしかしたら本当の標的はそういう開業予備軍なのかも知れません。