開業して1か月


最近鬱エントリばかりとなってしまい,これを読んだ勤務医の先生が開業する意欲を失っては厚生労働省の思惑通りですし,そんなに文句を言うなら何で開業したんだというご指摘もあろうかとは思います。少なくとも開業したことについては今のところ特に後悔はしていません。幸い設備投資も最小限ですみましたし,一定の固定客はいらっしゃるので経営はなんとか成り立っています。継承開業であったことはその点で良かったと思います。設備が古いですがそれはさほど気になりません(待合室と診療室のみ多少手を入れましたが)。ちなみに建物が古いと固定資産税が安く上がるというメリットもあります。


贅沢がしたい,たくさんお金が欲しいということになれば現状ではすぐに増収となる要因はありませんから,広告なり設備なりに投資をすることになるんでしょうけれど(それで収入が増える保障もありませんが),いまは勤務医から解放されて自分でペースを決められるのが何よりうれしい,というのが正直なところです。精神的余裕があるのとないのでは全然違います。医院が繁盛して仕事に忙殺されるようになればまた違う悩みが生じるのかも知れませんが,当面その心配(?)はなさそうです。


精神的余裕が生まれると患者さんへの対応も改善されます。開業医にとっては「客」なんだから当たり前だろうと言われたらそれまでなんですが,病院勤務で病棟や救急対応に追われているとただでさえ予約で一杯の外来はひたすら流れ作業にならざるを得ません。そうした状況でもできるだけ話を聞いていたつもりでしたが,症状とか近況を聞き出すのがやっとでした。現在の外来であればたとえ明らかな不定愁訴であっても家庭的社会的背景(その辺に要因があることが多い)まで配慮できるゆとりがあります。まあ単なる「愚痴外来」なのかも知れませんが,これが意外と楽しいことに最近気がつきました。


医師免許を取得してから数年はとにかくたくさん検査・治療を行って自分の技術を高めることが第一で,外来は正直好きではなかったので人間変われば変わるものだと思います。検査といえば現在はレントゲンとエコーぐらいで,それ以上は専門科を紹介することにしています。内視鏡と縁を切ることに多少未練はありましたが,リスクとランニングコストを考慮すればやむを得ないところです。エコーも必須ではないのですが低侵襲でありコストも電気代と感熱紙とインクリボンぐらいなので,半分趣味で導入してみました。ちなみに10例目ぐらいで症状があまり典型的でない総胆管結石・急性胆管炎に当たって,すぐ診断して紹介することができたのはたまたまですが結果的には良かったのかなと思います。


他に目を向ければ経営や人事など気の重い課題はあるのですが(自分にとってかなり苦手分野でもあるので),勤務医の頃に戻りたいとは全く思いません。ましてや医局の人事で関連病院を転々とするのは金輪際ご遠慮したいです。こんなことを言っているのも今のうちで,1年後いや半年後には医局に戻りたいと弱音を吐いている可能性もありますが,どうなるのか暖かく見守っていただければ幸いです。