異議申し立て2


先日(4月24日)の定例会見で厚生労働省に反論した日本医師会ですが,あらためて反論を行っているようです。


日本医師会 開業医の管理強化を懸念 厚労省報告書に反論
じほう 2007年5月14日

 日本医師会は9日の定例記者会見で、今後の施策の方向性をまとめた厚生労働省の報告書「医療政策の経緯、現状および今後の課題について」に対する見解をあらためて発表した。中川俊男常任理事は同報告書について、「医療機関の集約化や病床数削減によってフリーアクセスの権利を侵害する内容」と指摘した上で、「勤務医問題の解決を開業医の管理強化にすり替えようとしている」と真っ向から反論した。

 中川常任理事は「エビデンスに不明確なものが多く、そもそも政策資料として問題がある」と述べた上で、報告書で示された厚労省の主張について、<1>政策の失敗について反省がなく対策が的外れ<2>人口過疎地での地域医療を崩壊させようとする意図が見える<3>実施主体と責任の所在があいまい<4>現場の実態が無視されている<5>財源に触れられていない-の5点を問題点として挙げた。
 報告書の中で「患者は、フリーアクセスということで大病院でも専門病院でも直接に受診が可能であるが、拠点となる急性期病院の外来に患者が集中し、勤務医に過度の負担がかかるなどの問題も生じてきている」と記されていることについて中川常任理事は、「フリーアクセスのみが犯人にされているが、医師不足からくる勤務医の疲弊は、長年にわたる医療費抑制政策の結果」と切り捨てた。
  報告書が指摘している「在宅主治医」の重要性についても、「国民と医師の行動を限定し、不安に陥れるような施策であり、公的医療保険の最大の特徴であるフリーアクセス崩壊の第一歩」と述べ、国による開業医の管理につながると主張した。
 「公的病院を中心としたマグネットホスピタルで医師の供給調整機能を発揮する」との厚労省の構想に対しては、「派遣元の急性期病院が十分な医師数を確保するには財源投入が必要。これまでの財政中立の理屈からすると、民間病院の診療報酬が抑制され、民間病院は公立・公的病院の下請け化する」として反対の立場を強調した。
  厚労省の報告書は都道府県が策定する医療費適正化計画の参考となることから、中川常任理事は「都道府県は国の考えをうのみにするのではなく、医療現場と緊密な連携によって、地域の実情を反映した計画を策定し、積極的に国に発言すべき」と呼び掛けた。


週刊東洋経済での唐澤会長インタビューといい,厚生労働省に真っ向から反論する姿勢です。今年初頭から厚生労働省よりの言動が目につきましたが何らかの事情で方針転換したのでしょうか。それとも報道によるフィルターのため厚生労働省寄りに見えていただけでしょうか。もし後者であれば「お前が言うな!」などと申し上げたことは陳謝いたします。日本医師会も反撃するなら経済誌や業界紙ではなく,より広くアピールできる土俵に上がればいいのにと思うのですが。反発を恐れて控えているのか,したくても一般紙が取り上げてくれないのか。さもなければ,以前の報道に医師会員が反発して慌てて身内向けにアピールしているのでは,などと邪推もしてしまいます。


内容に関しては一点だけ疑問があります。

 報告書の中で「患者は、フリーアクセスということで大病院でも専門病院でも直接に受診が可能であるが、拠点となる急性期病院の外来に患者が集中し、勤務医に過度の負担がかかるなどの問題も生じてきている」と記されていることについて中川常任理事は、「フリーアクセスのみが犯人にされているが、医師不足からくる勤務医の疲弊は、長年にわたる医療費抑制政策の結果」と切り捨てた。

医療費抑制政策の結果として勤務医の過剰労働が生じているのはその通りですが,ただそれに対してアクセス制限をせずに解決するのは困難に思えます。厚生労働省の案はアクセス制限といいながらアクセスフリーで「総合科医」に丸投げしただけですし,日本医師会側も反対するのであればアクセス制限なしに勤務医の疲弊を軽減する対案を提示しては如何でしょうか。

病院指向の受診者を診療所に誘導したいのであれば,病院を受診するときの自己負担を増やす(もちろん病院の専門科を受診する必要がある方については救済措置を設けて)というような経済的な動機づけが一番効果的な気がします。もちろん患者さんにとっては負担が増えてしまい良いことではないのですが,勤務医が燃え尽きて地域の基幹病院が崩壊する,という究極のアクセス制限を防ぐためであることをご理解いただくしかないと思います。これを言い出すと「一般庶民の負担を増やすとは何事だ」と一斉攻撃を受け悪者になるのは明らかですから,厚生労働省日本医師会も口にできないのかも知れませんが。