自然の力と文明の関与


人間の持つ生命力や治癒力は確かに素晴らしいものです。また医療に出来ることは限られたものであるという意見にも賛成します。しかしその一方で,現実には医療の進歩により助かった方も大勢いらっしゃるわけで,そのことを過小評価するのは「科学的」な姿勢ではないと思います。


自分が持つ「自然の力」を見つめなおす - 日経ビジネスオンライン(要登録)

 これだけ文明化した我々の生活だが、生まれてくるときは人は裸である。そこは文明が関与できない。人工子宮なんて当分できなだろう。子供が生まれてくるというのは、もともと人間が持っている動物としての力というか、自然の力を一番問われるところだ。人間の持っている自然の力を見直すという意味で、出産について考えるというのは良いモデルケースだ。


助産師を取り上げたNHKの番組に対する「脳と心の謎に挑む新進気鋭の脳科学者」茂木健一郎氏によるコメントの一部*1。現代の日本で出産に「文明が関与できない」なんて言い切ってしまうのには疑問を感じます。唐突に人工子宮が出てくるのもよく分かりませんが...。周産期医学なんてまさに現代文明の賜物だと思うのですが,医療の介入により周産期死亡率が低下したことは取るに足らないということなのか,医療の介入が必要な出産はそもそも眼中にないのかは分かりませんが,「脳科学者」を名乗る方であれば「科学的」な評価をお願いしたいところです。

もしかして産科医療が崩壊して介入しようにも出来ない将来の話をしているということであれば,確かに「もともと人間が持っている動物としての力というか、自然の力を一番問われる」ことになるでしょうから,それはそれで納得は出来るのですが。

*1:肝心の番組も物議を醸しそうではありますが論評は他にお任せします。