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医師派遣と隕石破壊

医療政策 ネタ


既にあちこちで議論された話題ですが,ネタ半分で取り上げておきます。

医師の派遣緩和へ 都道府県の承認条件に(cache) - 朝日新聞 2007年10月16日


数年前に「アルマゲドン」というSF大作映画が公開されました*1。映画自体は陳腐,御都合主義と散々な評価でしたが個人的には割と好きなエピソードがあって,観てから大分たつのでうろ覚えなのですが,確かこんな感じでした。

地球に巨大隕石が接近していることが判明し,回避策を検討した結果,隕石を掘削して深部に核爆弾を設置,内部から破壊するしかないという結論になりました。そこで石油掘削業界で随一と評判のチームから石油掘削機の設計図をこっそり盗んでNASAの科学者達が実機を製作するのですがどうにも手に余り,仕方なくブルース・ウィリス演じる掘削チームのリーダーを拉致同然に連行してアドバイスを求めることになります。彼は設計図を盗んだことには当然のように怒りますが,掘削機の組み立てはもちろんのこと,掘削チームのメンバーが自ら現場で作業しないとどうにもならないことを認識し,最終的には地球の危機を救うために立ち上がることになります*2


なぜこの映画のことを思い出したかといえば,上記の記事の

 規制緩和後は、医師派遣の可否は、医療関係者や自治体首長らでつくる各都道府県の医療対策協議会が判断する。厚労省が6月に始めた緊急医師派遣システムにより、国の仲介で医師が赴任する場合も、都道府県の承認を得て派遣の形で赴任することが可能になる。ただし派遣元は医療機関に限定し、人材派遣会社の参入は認めない方針だ。

という部分です。要するに大学の医師派遣能力が崩壊したので,規制を緩和して充填するという意図でしょう。ただし民間の参入は認めず,行政側で何とかするということのようです。管轄する省庁の縄張りとか利権が絡んでいるのかも知れませんが,実際のところはもっと単純に「医師や業者に任せておくより自分たちがやった方がうまくいく」という,ある意味エリート的な発想があるのではないかと個人的には想像します。確たる根拠があるわけではないですが。

確かに行政の手続きや制度のすりあわせに関しては厚生労働省の中の人は優れた能力をお持ちなんでしょうけど,医師の人事に関してはこれまで医局が行ってきた以上にうまくできることはまずないでしょう。理由はいろいろありますが,やはりこれまで各所で指摘されているように「医師は医師の言うことしか聞かない」に尽きると思います。設計図を無断拝借したNASAの科学者の如く,医師の人材派遣システムを行政側で構築できるとお考えなのであれば,残念ながらミッションは不成功に終わるでしょう。いざその段になって「我々がやったがうまくいかなかった。アドバイスを頂けないか」と言われ,男気を見せて立ち上がる勇者が登場するかどうかは分かりません。


付け加えるなら,医局による医師派遣システムが理想だとは決して思いません。ただ,現在の医療崩壊を招いたのは医療を取り巻く環境(患者,行政,司法,報道など)の変化によるところが大きく,状況変化に適応できなかったのは事実としても,医局というシステムそのものが医療崩壊の原因となった訳ではないと考えます。

*1:先週日曜洋画劇場で放映していたみたいですね。

*2:間違いがあればご指摘ください。