立件見送り


当該の著書を読んでいないので出版したことの意義に関しては判断できませんが...。


奈良秘密漏示事件 ジャーナリスト草薙さん立件見送りへ(cache) - 10月31日 産経新聞


もちろん情報源であることが公になった以上は鑑定医の法的責任は免れませんし,守秘義務というのはそれだけ重いということです。


この件では,資料を情報源が明らかに分かる形で公にしたのであれば,初めから情報源の鑑定医を守る意図があったのかどうかは疑問です。鑑定医が逮捕・起訴される一方で当の草薙氏が立件を免れた訳ですが,この記事を読む限り,鑑定医が資料を漏洩したのは犯罪行為だが,その資料を鑑定医の意に反した形で(「ああいう形で出版されるとは思わなかった」と供述されています)公開するのは「共犯」とは言えないから犯罪行為に当たらない,というように理解しています(解釈が間違っていたらご指摘ください)。どうにも釈然としませんが,刑事事件として成立しない以上あとは関係者同士で話し合いなり民事訴訟なりやって頂くということなのかも知れません。


いずれにしても今後は,草薙氏に対して情報を提供する関係者などおそらく誰もいないでしょう。ただ草薙氏に限らず,他の多くのジャーナリストの取材活動にも影響を及ぼしてもおかしくない話だと思うのですが,どうなんでしょう。この件に関する報道機関の見解に興味がありますが,医師が逮捕されて司直の手が草薙氏に及ぶかと思われた時期には多くのメディアが取り上げていましたが,今回はいまのところ論評なしの比較的簡潔な記事ばかりのようです。

追記(11/3 11:30)

読売新聞(Web版)に解説記事が掲載されていました。

奈良の少年調書流出事件、鑑定医を起訴…著者は不起訴(cache)

追記(11/4 2:30)

朝日新聞(web版)にも追加記事がありました。

「違法では」講談社内にも不安の声 調書流出問題(cache)

 講談社内でも、出版への不安はあった。発売間近の5月、関係者が顧問弁護士に見解を聞くと、刑法の秘密漏示罪に触れる可能性があると指摘された。しかし、刷り上がった初版本は書店への出荷を待っており、ブレーキはかけられなかった。関係者の一人は、名誉棄損などの民事訴訟を起こされることは考えていたが、「まさか刑事事件に発展するとは予想もしていなかった」。

一応違法であることの認識はあったとのことです。ただ「刷り上がった初版本は書店への出荷を待っており、ブレーキはかけられなかった」という理由は一般には受け入れられないとは思いますが...。