医局の法人化


北大産婦人科…法人化、医局像一新狙う - 読売新聞(cache) 2008年1月13日

 大学医学部の医局は、各診療科ごとに設置されている医師の団体で、関連病院への医師派遣の調整や、若手医師を教育する役割を担ってきた。

 一方で、不明朗な寄付金の処理や、強権的な医師の人事がしばしば問題になった。一般的に、山崎豊子氏の小説「白い巨塔」に描かれるような教授を頂点とした権力構造をもつ組織のイメージが強い。

 今回の法人化は、そうした医局のイメージを払拭(ふっしょく)するのが狙いだ。人事や寄付金などの流れを透明化し、公認会計士によるチェックを受けるほか、関連病院と連携し、若手医師の教育システムを充実させる。また、「北大関係者以外でも、趣旨に賛同してくれる団体や個人は歓迎したい」(桜木教授)とし、広く門戸を開いていく考えだ。


記事を読む限り「入局希望者が少ないのは医局のイメージが悪いため。法人化すれば改善される」と受け取れます。これを伝えるメディア自体が医局に悪いイメージを持っているからこんな記事になるだけであって,医局の中の人が本当にそんな認識ではない,という可能性もありますが…。確かにこれまで医局といっても法的には何の根拠のない団体で内部にいても得体の知れないところはありましたから,法人化して外部監査もするというのは悪いことではないとは思いますが,それですぐに医局員不足が解決するというものでもないでしょう。


根本的には医療政策による医療機関の収益低下,労働環境の悪化が背景にあるんでしょうけど,医局も全くの被害者というわけでもなく,そうした環境の変化に対する認識が充分でなく,自分の構成員を守ろうとする努力をしなかったことが人材流出の原因となっているように思えます。少なくとも自分の知っている範囲では「医局の金の流れが不明瞭だから辞める」なんてひとは聞いたことがありません。


法人化することにより「社員」にとっては雇用者との契約が明文化され,労働条件に関して交渉しやすくなるというメリットはあるのかも知れませんが,「社員」が満足できる労働条件を提供できるかどうかは現実問題として困難でしょうし,とすれば「社員」不足が改善できるかどうかも微妙です。まあ一番ありそうなのは,肩書きだけが変わって実状は何も変わらない,という可能性でしょうか。そうなれば現状と同じ労働条件で契約を結ばされそうになり馬鹿らしくて辞める,というひとも出そうな予感もします。