医師強制配置案


朝日新聞の社説で医療財源と医師の配置について見解を述べています。

希望社会への提言(14)―医療の平等を守り抜く知恵を(cache) - 朝日新聞 2008年01月28日


社会保障費の財源については,消費税を増税して財源に充てるとの意見です。以前から同じようなことを官房長官が主張していて,社会保障国民会議でもおそらくその方向で議論されていくんでしょうから,いまさらここで力説しなくてもという気がします。メディアの役割としては,むしろその妥当性について検証するべきでしょう。


一方医師の配置についてはどうかといえば,

 医師が充足するまではどうするか。産科や小児科など、医師が足りない分野の報酬を優遇する。あるいは、医師の事務を代行する補助職を増やしたり、看護師も簡単な医療を分担できるようにしたりして、医師が医療に専念できる環境をつくることが大切だ。

既に公になっている厚生労働省の方針を引き写しただけで,本当に有効性がある政策なのか検討した形跡はありませんが,そのうえで,朝日新聞の見解は

 そのうえで、診療科目の選択や医師の配置に対して、公的に関与する制度を設けるよう提案したい。
 医師の専門分野が偏らぬよう、診療科ごとの養成人数に大枠を設ける。医師になってからは、一定期間、医師の少ない地域や病院で働くことを義務づける、というものだ。

 配置を受ける時期は、研修時や一人前になったとき、中堅になって、といろいろありうるだろうが、義務を果たさなければ開業できないようにする。

 医師は命を預かるかけがえのない仕事である。だから私立医大へもかなりの税金を投入している。収入が高く、社会的な地位も高い。たとえ公立病院に勤務していなくても、公的な職業だ。

 自由に任せていては、医師の偏在は解消できない。社会の尊敬と期待にこたえて、このように一時期の義務を受け入れることはできない相談だろうか。

ということで,要は医師の強制配置論のようです。医療崩壊に関する記事も最近取り上げてそれなりに認識を改めているかと思っていましたが,この社説を拝見する限り1年前の北海道新聞と同じレベルです。それにしてもメディアの中の人はなぜか「医師の強制配置」という発想に執着する傾向があるようです。「社会の尊敬と期待」なんて破壊した当事者がどの口で言うのかと思いますが。

ある意味では「強制」という厚生労働省の立場から直接口にしにくいことを,メディアという「社会の公器」が,自覚的なのかどうかは分かりませんが,わざわざ代弁してくれているようにも見えます。そういえば日本テレビニュースゼロでも「医局に代わる医師の配置について考えていきます」みたいなことを言っていましたが,これも同じような流れなのかもという気がしてきました。

 プロ野球のドラフト制度をヒントにしてみてはどうだろうか。新人だけでなく中堅の医師を含めて、医師不足の県が、医師の多い県から優先的に採用できるようにするのだ。

ここは笑うところでしょうか。医師の多い県ってどこなのか,まともに答えられなかった前任の厚生労働大臣に代わって教えていただきたいものです。