医療費の痛みを味わう


当方の個人的な見解ですが,医療や福祉などの生活に必要なサービスは社会に広く分配されるべきで,そのために社会保障のシステムが存在すると考えているのですが,であれば給付とそれに対する負担の範囲は広い方が望ましいはずです。実際には事務的な手間などを考えて大まかなグループに分割することになるんでしょうけど,それでもグループ同士の格差は少ないに越したことはありません。

ところが後期高齢者医療制度というのは,高齢者は医療費がかさむのでそこだけ別枠にしようという発想です。当然その別枠の中ではサービスの質が下がります。政府の公式発表やそれに基づいた報道ではその辺はマイルドな表現になっていますが,結局はそういうことです。これを厚生労働省の官僚が自分の言葉で語るとこうなるようです。

医療費が際限なく上がっていく痛みを、後期高齢者が自分の感覚で感じ取っていただくことにした

後期高齢者制度は“悪魔の選択” - キャリアブレイン 2008/02/01

要するに「医療費がかさむのはあなたのせいなのだから,あなたが苦しめばいい」という意味ですから,かなり強烈な悪意が感じられる発言です。公の場で発言した側はあまり発言の邪悪性を自覚していない様子ですが。


このキャリアブレインという医療記事配信サービスのいいところは,中医協の時もそうでしたが担当官僚の個人名をきちんと掲載していることです。彼らが政策によって生じる結果について個人で責任を負うことはありませんが,少なくとも彼らの発言が個人名とともに残ることは,いずれ検証の対象とすることができるという点で意味があることだと思います。

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■後期高齢者という線引き 2008-1-7