エンターテインメントと医療2


時間があったので,映画「チーム・バチスタの栄光」を観てきました。結末についてはすでに原作を読んで知っているので,映画のストーリー自体よりも,この映画を観たひとがどう受け取るんだろうというあたりに興味を持ちながら観ていました。まあ,映画の見方としては邪道かも知れません。手術そのものが主要な鍵となる物語ですから医療関連シーンのリアリティは重要になりますが,そこは無難にこなしている感じ。もちろん外科の先生からすればツッコミ所が満載の可能性もありますが,雰囲気は出ていた気がします。

これから観る予定で余計なことを知りたくない方のために以下フォントを反転しておきます。


特筆すべきは心拍再開の場面。実際の手術ではあんな感じなのかはよく知りませんが,リスクの高い手術に際して術者やスタッフにとても強い精神的負担がかかっているということが,よく表現されていると思います。それだけに惜しいのは,原作では,医療のシステムそのものが医療者に肉体的・精神的なストレスのもとで働くことを強いている背景が動機にも繋がっていたところを,映画ではそのへんの説明が申し訳程度にしかされてなくて,あれだと単なる個人的動機であるかのように受け取られてしまうように思います。

あと,オートプシーイメージングを提案したら放射線技師(?)が激怒してましたが,死後画像検索そのものは普通にやっている病院もあるので(MRIはさすがにあまりやらないと思いますが)ちょっと不自然でした。もしかしたら何かの伏線かと思っていたら何もなかったので,単にオートプシーイメージングが医療現場に普及していないという描写なんでしょう。


まあそれはそれとして,映画としては面白かったというのが正直な感想です。多分それなりにはヒットするんじゃないかと。キャラクターの魅力については一般の映画評論サイトにお任せします。一般の方々がフィクションの世界から医療の問題に関心を持ってくれてたら,原作者の目的はある程度は達せられるんじゃないでしょうか。


どうでもいいことですが「手術」ってちゃんと喋ろうとすると結構難しいですよね。俳優の皆さんがちゃんと発音しようと頑張っているので,なおさら気になりました。我が身を振り返ってみると,たぶん「しじつ」とか「しじゅつ」あたりで誤魔化しているような気がします。

あとひとつ付け加えるなら,ソフトボールのシーンは正直いらないと思います。