医療崩壊と技術の継承


先日のエントリ■見えざる脅威に対して暇人28号先生から頂いたコメントが過去エントリに沈めるにはもったいないと思い,新しくエントリを立てさせていただきました。以下コメントを一部再録します。

このまま皆保険制度の維持を無理強いすれば、医療崩壊は際限なく進行します。早急に混合診療導入に舵を切るべきだと思います。病院の体力があるうちに行わないと回復に時間がかかります(といっても、元のレベルには回復しないでしょうけど)

このコメントを読む限り,今後医療現場から医師の逃散が進行することにより医療技術の途絶を懸念され,自由診療という形で必要な戦力を残しておく方針と理解しました(違っていたらすみません)。

当方なりの現状認識としては,現在さまざまな要因(おそらくは医療技術の進歩)により医療ニーズが増大していて,それに対する医療の人的資源が追いついていないという状況で,その結果生じた供給不足が医療現場の崩壊という現象として現れている,ということなんだと思います。それを市場原理で適正化しようとした結果がアメリカ型医療崩壊,つまり映画「SiCKO」の世界ということでしょう。よほど裕福でない限り,まともな医療を受けようとしたら破産覚悟ですから,確かに専門的な医療技術自体はVIP専用として残すことは出来ます。ただその場合には,rijin先生のコメントにもある通り,

その手法として、負担しうる者が極少数である混合診療では、大勢に影響は与えられません。スキルの継承はやはり困難でしょう。

ということになるのかも知れません。何より,一度市場原理型医療に舵を切れば,あとで戻そうと思っても極めて困難だと思われます。

かといって,公的医療サービスを維持したままでは医療ニーズの増大を食い止められず,無理やり制限すればイギリス型医療崩壊にもなりかねないわけで,それこそ暇人28号先生が憂慮されるように医療技術の断絶もしくは国外流出が現実的となります。結局のところ世界中見渡してもこの難題を解決した国はないようです。

もちろん当方如きが解決策を持っているわけもありません。何となく,アメリカ型でもイギリス型でもなく,ほどほどの医療レベルとほどほどのアクセスで国民に納得して頂くような道があればいいのかなとは想像はしますが,実際のところそんな単純にいくわけもないだろうとも思います。まかり間違って民間医療保険でアメリカ並みの高負担のうえ,イギリス並みにアクセスが悪いなんてことになれば最悪です。


分不相応の話題を取りあげて案の定まとまりのない文章になってしまいました。ご容赦下さい。認識の誤っている点も多々あると思われますので,ご指摘頂ければ幸いです。

関連エントリ

■映画『シッコ SiCKO』感想 2007-09-02