切れ目のない医療という幻想


産経新聞の「主張」というコラムより。
高齢者医療 問題点を直視し改善図れ(cache) - 産経新聞 2008/03/10


内容については厚生労働省見解をほぼ代弁するものでいまさら特筆すべき事はないのですが,以下の一節が個人的にちょっと引っかかったのでコメントしておきます。

 だが、切れ目なく質の高い医療を実現するには、病院と開業医、介護関係者ら専門家の連携が不可欠だ。日ごろの意見交換はむろん、住民への説明会を開くなど地域全体で高齢者を見守る態勢を作らなければスムーズにはいかない。核家族化で独り暮らしの高齢者も増えている。医療と介護を受けられる施設の整備も急がれる。

在宅で医療や介護を受けている方にとって関係者の連携が重要なのはもちろん,人員や施設を充実させる必要があるのはその通りなんですが,在宅に関わる関係者ががんばって連携すれば「切れ目なく質の高い医療」が実現できるというわけではありません。

かかりつけ医師や訪問看護師が頻繁に訪問するのも物理的限界があり,最も訪問する頻度の高いヘルパーでさえ基本的にはケアプランに従って,一日○時間という枠の中で介護するに過ぎません*1。結局のところ1日24時間のうち大部分の時間に関しては同居家族の自助努力に負うわけであって,「切れ目のない医療」なんていうものは幻想*2に過ぎないと個人的には思います。

長い間同居家族を介護されていてその辺については割と理解されている方が多いんですが,なかには「介護サービスはちゃんと手配しているんだから」と独居高齢者の様子を見に来るさえもしない方もいます。ふだん介護と縁遠いひとがこの文章を読んで素直に受け取って,変に幻想を抱くことの弊害は大きいんではないだろうか…なんて考えてしまいます。

関連エントリ

■集落は仮想「病院」という発想 2007-10-3
■PPK 2007-10-29

 

*1:しかも前回の改定で枠は大幅に削減されました。

*2:誰が作り出した幻想なのかは言わずもがなですが。