放送メディアの検証2


出遅れましたが,日本テレビ「ニュースゼロ」の救急崩壊シリーズを視聴してみました。「たらい回しではなく受け入れ不能が実態です」と明言したのは放送メディアとしては(というよりメディア全体としても)画期的なのかも知れません。「ドミノ倒し」「コンビニ受診」もしっかり取り上げていました。

そういう点はもちろん素直に評価すべきなんでしょうけど,正直なところ当方としては「いまさら」感が先立ってしまうのも事実。「医療崩壊」なんて2年前から公然の事実だったのに今まで何をやっていたんだか,なんて思ってしまいます。むしろ今までは崩壊を煽るような報道を続けてきた訳ですから。


ここでメディア側の一見解として,日本テレビの親会社である読売新聞東京本社編集委員,南砂氏の発言を引用しておきます。

もうひとつ申し上げたいのは、医療現場の切実な状況だ。私どもメディアがあおってきたと言われるので、こういう場で非常に言いにくいけれども、国民の医療不信というものが何年か前にもう極に達したという印象である。ところがもっと深刻なことは、現在、医療現場の医療を担っている方々のメディアや、社会に対する不信が深まっているということだ。それが急速に大きくなっていて、よく言われる萎縮医療とか、先ほど来指摘のある、やっていられないと思う方が医療従事者の中にもふえてきた、ということだと思う。本当に悪循環になってしまっている。

社会保障国民会議 サービス保障(医療・介護・福祉)分科会(第1回) 議事要旨

国民と医療の相互不信について認識はされているようですが何というか,まるで他人事のような口調。「私どもメディアがあおってきたと言われる」って,本当はそうじゃないんだけど…と言わんばかりで,医療崩壊の当事者としての自覚は伺えません。

ちなみにこの発言のあとは「こういう状況の中で、今、必要なのはやはり国民にどこまでできるのか、ということをきちんと提示して、議論をすることではないか」と続きます。そういう議論から国民の関心を遠ざけてきたのもまたメディアではないかと思うのですが…。


偉いひとの認識がこれでは,現場でいくら「我々にも反省すべき点があった」と考えてもそれを公然と表明することは出来ないのかも知れません。組織とは不自由なものです。まあ,どこまで本気なのかどうかは今後の放送内容を見ればいずれ分かることですから,とりあえず期待はしておきたいと思います。