懇切丁寧な5分間診療2


診療報酬改定資料を読む限り,外来管理加算は医師が「概ね」5分を超えて直接診察を行った場合に算定できるとあります。厳格に5分以上のみを算定するとなれば診療そのものが成り立たなくなる診療所が続出しますから,「概ね」というのは厚生労働省側がその辺を「配慮」した書き方なんでしょう。医師会からの説明の席上でもそうした「配慮」があるから心配ないという主旨の説明で,なんだか人がいい話だけど,そんなものかと思いながら聞いていました。


ただしメディアはそんな事情なんか関係ないので,こういう記事になるわけです。

4月から診療報酬改定、再診料「5分ルール」(cache) - 読売新聞 2008/03/25

厚労省保険局は、診察にかけた時間をカルテに記録するよう求めている。調査する際は、1時間に12人を超える診療がないかをチェックする方針。「時間が長ければ長いほど、患者にとって質の高い医療になる」と強調する。

3分診療では不十分だが5分なら充分質が高いとの仰せで,普通はここで疑問が生じてもよさそうなものですが,特に気にならないようです。

これに対し、全日本病院協会は「普通に診察すれば5分ぐらいかかる」と静観の構えだが、再診は定期的に通う慢性の患者も多く、開業医や中小病院からは不満の声が出ている。

病院協会も,外来管理加算は大病院とは関係ないからといって随分なコメントじゃないでしょうか。中小病院がないがしろにされているようで少し気の毒です。それにしても,なんでこういうときに限って「開業医の団体」である医師会に聞かないんですかね。開業医からコメントを取ったと思えば,

大阪市内で診療所を経営する内科医は「時計をにらんで話を引き延ばす医師も出てくる」と語るなど様々な影響が出そうだ。

こういう恣意的な取りあげ方をするわけです。この文章で締めくくるあたり,記者の意図するところも何となく察することができます。要するに,開業医が金を稼ぐために診療時間を引き延ばそうとするんじゃないか,というわけです。そうするとこの記事には詰めの甘いところが一つあります。


左は記事に添えられたイラスト。「5分以上かけて丁寧に…」と診察している医師に対して,あと10秒で「料金が上がっちゃうよ…」と時間を気にする患者さんの構図です。

このイラストを拝見する限り,左の医師が比較的誠実そうな描き方なのに対して,右の女性はやや間違った方向に「患者力」を発揮している若干変わった感覚をお持ちのような印象を受けます。これではまるで157円を惜しむ患者さんの方が間違っているかのような印象を読む側に与えてしまい,記事の趣旨に反する不適切なイラストです。本文の趣旨に沿ったイラストにするためには,医師の人相をもう少し悪賢そうにして,セリフは「あと10秒で157円ゲット!」くらいにしないといけません。

当然のことながら記事全体の品位はかなり落ちてしまいますが,それはイラストの責任ではなく,記事本文のレベルがその程度なのですから仕方がないと思われます。


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■懇切丁寧な5分間診療 2008-02-04