昔はよかったね


医師に労基法はそぐわない(cache) - 産経新聞 2008/03/27

医師の勤務が労基法に違反している云々(うんぬん)などは、現場の医師にとっては寝言に等しい。医師の激務や待遇の改善は必要だが、今さら労基法を当てにする者など、まずいないだろう。万一、医師が労基法の適用を求めだしたら、現場はたいへんな混乱になる。

思い出してみると,当方が初期研修を終えて基幹病院に赴任した頃はこういう意見が医師の間でも主流でした。当時医師不足なんて騒がれていませんでしたが,医師の数が今より多かったわけではなく,戦力不足を過重労働で埋めて一見業務が回っているように見えていましただけの話です。もちろん,そんな「偽装」状態が長く持つわけもなく,医療ニーズの増加に医師の「強度」が耐えきれず医療現場が崩壊しているのが現状。

そういう状況で上の主張を聞くとある意味,懐かしさを覚えます。昔はそれでよかったのに…という嘆きを耳にしますが*1,本当に当時の状況が「よかった」のかは個人的には疑問です。むしろ,どこかにおかしいところがあったから今の惨状があると考えるのが妥当でしょう。

空論を「医師」の肩書きで言われるのがなおさら腹立たしいのもありますが,その点は他でも充分指摘されているのでそちらに譲ります。むしろ労働基準法を無視した職場から離れた当方としては,「現場の医師」に対して他人事のように空疎な「正論」を主張するようなことがないように…という戒めと受け取りたいところです。


 

*1:医師会方面で特に顕著。