開業医のジレンマ


「主治医制」拒否広がる - 中国新聞 2008/04/10 cache

 福山市医師会は3月31日、従来通り診察内容に応じた出来高払い制を続けるよう文書を開業医約240人に送った。病状が悪化した際も、高額検査以外は医療費の追加算定できず、粗雑な診療につながる―と問題点を強調している。

いまのところ自主的に手を挙げないと「主治医」にはならない仕組みですから,「主治医」にならなくても今まで通り出来高で各種管理料も算定できるとあれば,誰かに指示されるまでもなくこれまで通りの診療を続ける開業医が多いと思われます。


ただし,今後もし「主治医」以外は管理料を取れないという事態になれば*1話は別です。

仮にどこかの開業医が「主治医」に手を挙げて後期高齢者診療料を総取りしようとすれば,他の開業医も同じ行動に出ざるを得なくなり,患者を奪い合った結果,いずれほとんどの後期高齢者は包括医療となるでしょう。各自が「勝ち組」を狙った結果全員が「負け組」となる*2あたり,有名な「囚人のジレンマ」に似ています。

誰も「主治医」にならなければ現状と同じですから,抜け駆けする開業医さえいなければ現状と変わらない筈です。ただし,医師会に属さない開業医が増えてきたことや,ここ最近の医療政策により診療所の経営は相当厳しくなっているという現状を踏まえると,「裏切り」を選択するところが出てくるのは充分あり得る話です*3

仮定の話ではありますが,現時点で影響がないからこのままで良いとはならないことは言えると思います。


某掲示板では「主治医」になるために「講習を受けること」という要件が「介護認定意見書の講習を受ければOK」という感じでかなりハードルが下げられているところもあるという情報もあって,まあホントかウソかは分かりませんが,厚生労働省の意向を踏まえればありえそうな話ではあります。


 

*1:法改正の必要もなく,一片の通知で事足ります。

*2:提供できる医療の質は低下するし,医療機関も収益が落ちるのは明らかです。

*3:ついでに言えば,厚生労働省は批判されても「強制はしていない。開業医が自主的に手を挙げた」と主張できます。