選挙と医療政策2


山口2区補欠選挙では野党推薦候補が当選したそうですね。今後はきっと「後期高齢者制度に対して世論が拒否」という報道が大々的にされるんでしょう。それにしても「高齢者が医療費をどのくらい負担すべきなのか」という問題はそんなに簡単に決着がつく話とは思えないんですが,その辺に関してこの選挙でどのくらい掘り下げられたんでしょうか。

現役から退いたお年寄りの中にも「若い者に迷惑をかけたくないから自分たちの分くらい負担しないと」という方もいれば「これまで社会に貢献してきたのに年金からも取られるのはいやだ」という方もいるでしょう。一方働いた賃金の中から保険料を払っている世代からすれば「医療費をたくさん使っている世代がもっと負担しろ」という考え方も「高齢者に負担させれば無理が生じるので自分たちの世代も広く負担するべき」という考え方もある筈です。

個人的には最後の見解に近いのですが,それ以外の考え方を認めないというのではなく,社会の総意がどの意見を選択するのかが重要だと思っています。現在の日本では社会の総意は選挙で決めることになっているわけですから,もし医療費が争点なのであれば「制度のあり方」がポイントになる筈なのですが,政治的思惑やメディアのミスリードにより争点がずらされているようにも見えます。例えば「高齢者にちゃんと説明しろ」というのは制度の「運用」の問題であって本質ではありません。

「医療費を誰が負担するのか」という問題をスルーして「高齢者をいじめるのは良くない」を大前提に議論を進めると「高齢者も負担しろ」と考える方は当然納得できませんから,何かの拍子に世論が今度はそちらに急激に流れることもあるでしょう。そう考えると当方には「後期高齢者制度が選挙で否定された」と素直に喜ぶことがなかなか出来ないのです。…考えすぎでしょうか。

ついでにいうと,2年前に法案が可決されて以来,厚労省から高齢者医療制度に関する方針が小出しにリークされて来ましたが,その間大手メディアはリークされた情報をそのまま記事にするだけで日和見を決め込んでいました。今回の選挙で鬼の首を取ったように「後期高齢者医療制度は廃案にすべきだ」なんてご高見を宣うようなところは,今のうちに「お前が言うな」とツッコミを入れておきます。