医師法21条は違憲無効


大野病院「事件」は現在地方裁判所において業務上過失致死と医師法21条違反について争われています。前者に関しては医師の医療行為が「過失」などではないことが,専門家の知見に基づいて主張されました。公判後の会見でのコメントを読むと,

帝王切開死最終弁論 - 読売新聞 cache

主任弁護人の平岩敬一弁護士は公判後、「検察側は予見可能性、結果回避義務などの立証に失敗した」と述べた。一方、福島地検の村上満男次席検事は「一般の感覚から法律という最低ラインを逸脱しているかどうかが問題。証拠に照らして裁判所の公正な判断を希望する」とコメントした。

検察側としてもこの点についてはまともに反論できない状態なんだろうなと思います。一般の感覚というのは「なんだかんだ言ったって亡くなっているんだから悪いに決まってるだろ」というレベルだと仰りたいのかも知れませんが,まあ,全ては「裁判所の公正な判断」次第でしょう。


一方医師法21条違反に関しては公判を通してあまり議論されていなかったように思えます。裁判所側がこの争点に関する被告側の証人申請をなぜか却下した意図はよく分かりませんが,なんとなく一抹の不安を以前から感じていました。福島県立大野病院事件・最終弁論公判(2) - ロハスメディカルブログの川口氏が危惧するように,

検察のメンツを立てるため、こちらだけ形式的に有罪にするという判決は法律家の相場的にはある話らしい。

ということもなきにしもあらず,かも知れません。なおこちらのサイトで紹介されていた最終弁論ではその辺に関しても直球勝負の主張が行われていました。

そもそも医師法21条は、憲法31条により根拠づけられる罪刑法定主義明確性の原則に反しており、違憲無効な法律であり、違憲無効な法律により人を処罰することはできないから、被告人は無罪である。

さらに医師法21条は、憲法38条に根拠づけられる黙秘権を侵害する違憲無効な法律であり、違憲無効な法律により処罰することはできないから、被告人は無罪である。

後段は都立広尾病院事件における最高裁判決を完全に否定する主張で,今後の事故調の方向性にも関わってくる重要な議論ではないかと思います。本公判で裁判所がどう取り扱うのかが見物です。

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■福島県立大野病院事件と医師法21条 2008-01-25