日本医師会の大罪4


日本医師会が第三次試案に対する見解をとりまとめているとの情報を僻地の産科医先生のところで知りました。都道府県医師会レベルで「ご意見」を収集するようですが,このレベルであればまだ日本医師会のコントロールが可能と言うことなのでしょう。先日「会員の8割が賛成」と豪語していたのも同様で,末端会員に至るまで集計を取れば都合が悪い結果になることは理解していると思われます。


第二次試案に対する日本医師会の見解は無理やり要約すれば「全例届けなければいけないわけではないし,届けなかったときのペナルティも軽いから心配ない。調査結果が刑事訴訟に使われるのはどうしようもない」という内容で当然のように各方面からツッコミを受けることになりました(当方のツッコミはこちら→■日本医師会の大罪2)。今回はどうでしょうか。特に気になったところを引用します。

この状況を抜本的に改めるためには、医師法弟21条を改正し、普察ではなく新たな届出先として中立的な第三者機関である医療安全調査委員会を新たに設置することにより、医療の質の向上と安全に資するべく死因究明・再発予防の制度を作ること以外に方策はない。

第三者機関が必要であり,そのための制度を作るというのは正論ですが,その制度が医療事故の原因究明と再発予防に寄与するかどうかが問題です。そのためには調査結果が刑事訴訟に利用されるべきではないし,調査機関は厚生労働省外部に置くほうがいいのではという議論になる筈なのですが,

一方で、刑事罰の適応の問題や行政処分の実施方法、調査委員会の設置場所の同意並びに重大な過失の意味するところ等、まだ明確にしなければならない点や疑問があるとの意見も出された。これらの明確にすべき内容は、改めて厚生労働省に要望を行うことは勿論、警察庁・法務省に対しては、参議院決算委員会での両刑事局長による「試案の内容は厚労省と合議し、了解している」との答弁の通り、試案の記載内容の遵守を求めていく。

調査機関の設置場所や行政処分厚生労働省次第とのことです。昨日のエントリで述べたとおり,厚労省自身がシステムエラーを誘発する政策をとっている以上,自分の調査権限を強化することは利益相反でしょう。刑事訴訟との絡みは裏で手打ちしているから問題ないとの仰せですが,裏で手打ちしたものを反故にされても表だって文句は言えないわけだし,何よりそんな裏取引じみた運用をすると宣言すること自体が,外部からの信頼を失うものです。

今回の医師法第21条の改正問題のように、利害関係が異なる人々に影響する法律を作成するということは大変難しい作業であるが、第三次試案で示されたように、全ての医療事故を免責にするということは出来ないまでも、調査委員会に届出を行うことによって医師法第21条の所轄警察署への届出を要しない点や、そのことにより99%刑事罰の対象とならないこと等、司法・警察当局者を交えた厳しい議論と協議の結果、合意がなされた点は、我々医療従事者として十分評価しなければならない。

我々も頑張ったんだからこのへんで勘弁してくれ,と仰りたいようですが,これでは見解というよりは弁解と称するべきです。

本会は、反対意見として貴重な意見が寄せられたことを十分受け止めつつも、多くの医師会の賛意を重く受け止め、今回の厚生労働省第三次試案に基づく、医師法弟21条の改正と、医療安全調査委員会設置の法制化を強く要望する。

当方は少なくとも日本医師会に賛意を示した記憶はありませんし,機会も与えられなかった末端会員としては,せめてネットの片隅で意思表示はしておきます。


今回の厚生労働省第三次試案に基づく,医師法第21条の改正と,医療安全調査委員会設置の法制化には強く反対する。


追記(2008-05-24 11:55)

産科医療のこれからで取りあげて頂きました。コメントしたのですが反映されていないようなので,失礼ながらこちらでお礼申し上げます。