政管健保の切り換え


Yosyanさんのところのコメント欄より。「法務業の末席」さんの発言を興味深く拝見しました。政管健保が新組織に切り替わることは知っていても,なかなか具体的な問題点までは思い至りませんでしたので,大変勉強になります。

本年10月1より3500万人余りが加入(被保険者本人+被扶養者の合計数、後期老人保険制度実施前のH18年度の時点)している政管健保が廃止され、新たに都道府県ごとの「協会けんぽ」に切り替わります。6月10日現在で実施まで残り112日となりましたが、未だに都道府県ごとの健保協会の組織作りや、旧社保庁職員から協会に移籍する職員の辞令交付などが為されておりません。

原則として10月からは、現状の社保庁が保険者となっている政管健保の被保険者証を、都道府県ごとの協会の新しい被保険者証と交換しなければなりませんが、到底準備が間に合いそうもありません。その為に新協会健保証は10月1日からの新規分だけとし、現状の政管健保証の所持者には当分の暫くの間は証交換せず暫定的に使わせる見込みです。

また現在の政管健保は全国一律の保険料(介護保険を含まない健保のみでは82/1000)ですが、新「協会けんぽ」では、都道府県の協会ごとの保険収支見通しにより賦課する保険料率を個別に決定される(H21年度より)見込みです。丁度現在の組合健保が健保組合ごとに保険料が異なるのと同じ原理で、来年からは都道府県ごとに健保保険料が違って来ることになります。その為に複数の都道府県に跨って事業展開している会社の中には、従業員を支社支店の所在する各々の都道府県の協会に入れるか、それとも本社所在地の都道府県で加入させるかで保険料負担が違って来ますので結構大きな問題です。ところが未だに「協会けんぽ」の都道府県ごとの予測保険料率も定かではありませんし、政治情勢の思惑(選挙対策の党利党略の思惑)から新保険料の適用時期の先送りや、保険料が高くなると予測される都道府県選出の政治家が全国一律保険料制度の長期暫定適用を唱えて厚労省官僚に運動したり、多くの政治的思惑に翻弄されているようです。

いずれにせよ衆議院議員の任期も残り1年少々ですので、解散総選挙にしろ任期切れ総選挙にしろ、来年9月までには必ず総選挙が実施されます。そうした選挙日程を控えながら、後期高齢者医療保険政管健保の改変、さらには基礎年金の1/2国庫負担実現の期限到来(H21年度)や社保庁の解体&新組織「年金機構」への移行(H21年12月末で社保庁は無くなります)等々、社会保険制度の大変革がこれから1年間に集中しますので、政治の側からの「暫定見直し&先送り」という名の横槍が頻発して社会保険制度の現場は更に混乱が増すでしょう。


都道府県によって保険料が異なるということは,産業や人口構成によって相対的に医療費がかかる都道府県は保険料が上がってしまうので,ますます加入者から避けられて財政が苦しくなることになります。都道府県ごとの保険者(協会健保)が診療に対して医療費の給付を抑えるという「自助努力」によって,国全体の医療費を抑制させようというねらいだと思われます。つまり,医療機関にしてみればまともに診断・治療してもなんだかんだ理由をつけて医療費が協会から支払われないことが増えて,結果として必要な医療がやりにくくなる,ということだと理解しているのですが間違っていたらご指摘下さい。


いずれにしても保険料が上がるところからは当然のように不満が出ます。後期高齢者医療制度で現在進行しているのと同様,制度実施の遅れによりただでさえ現場が混乱しているところに,政治的な思惑でスケジュールの変更を余儀なくされることは容易に予想されます。いざその時になって相当振り回されるのは覚悟しておいたほうがよさそうです。