刑事免責はあり得ない

日経メディカルオンラインに元検事の飯田英男氏のインタビューが掲載されていました。医療事故に対する刑事免責は許容できないとの趣旨で,そのうち大野病院事件に触れた部分を引用します。


刑事訴追、そのとき医師は… Vol.3「医師の刑事免責はあり得ない」弁護士 飯田 英男氏に聞く(要ログイン)

――福島県大野病院事件は、医療界では「不当起訴」ととらえられ、非常に問題視されていますが。


飯田 私は、県立大野病院事件についての証拠などを見ているわけではないので、実際のところどうなのかは全く分かりません。ただ、事故究明のための県の第三者委員会が医師の過失を認めた上、捜査機関も、医療専門家に鑑定してもらって起訴に踏み切っているわけです。確かにわが国の医療裁判の無罪率は他の罪種よりも高いのは事実ですが、警察や検察も専門性に配慮して慎重に捜査し、起訴していることを理解してもらいたい。


大野病院事件だけをクローズアップし、「不当起訴が増えている」という人もいますが、そういった人たちは、ほかの起訴事例も不当起訴だと思っているのでしょうか。過去の医療裁判の判決をつぶさに見れば、未熟な医療や無謀な医療が有罪になっていることが分かるはずです。


「医師を刑事免責にしないと、医療は進歩しない」と主張する医療関係者がいますが、未熟や無謀と思われる医療まで罪に問われないのであれば、国民は果たして納得するでしょうか。そもそも、医師という職業だけを刑事免責することは、裁判制度の趣旨に反しており、許されません。


「医師の刑事免責はあり得ない」の意味が,医療行為が正当なものと認められるのであればそもそも業務上過失致死罪の要件には当てはまらないし,「未熟な医療や無謀な医療」ではない正当な医療行為の結果に対して刑事罰を加えることが誤りであって,あえて刑事免責なんて概念を持ち出す必要はない,という意味であればまったく反論はありません。また,具体的な事例については,起訴したことの妥当性を報道などによる断片的な情報から判断するべきでない,というのは専門家として当然でしょう。


飯田先生におかれましては,他の起訴事例に関しては,判決文を検討した上で「未熟な医療や無謀な医療が有罪になっている」と判断できるとのことですから,大野病院事件の判決文が明らかになった暁には,裁判において提示された証拠を検討した上で,この「事件」における医療行為が「未熟な医療や無謀な医療」であったのか,そして福島地検の判断が妥当であったのか,是非とも評価をお願いしたいと思います。そして,もし「未熟な医療や無謀な医療」ではなかった場合,そうした医療行為を罪に問うことが果たして妥当なのか,国民が納得できるかどうかを論じる以前に,まず司法の専門家としての見解をご教示頂きたく存じます。