大学院生も労働者


いつもお世話になっています僻地の産科医先生のところで知りましたが,文部科学省から「大学病院は大学院生にも労働者として最低賃金を払って労働基準法を守りなさい」という通知が出ていた模様です。


医師及び医療関係職と事務職員等との間等での役割分担の推進及び診療に従事する大学院生等の処遇改善について(通知)

 医師及び医療関係職と事務職員等との間等での役割分担につきましては、これまで、厚生労働省医政局長により、別添1「医師及び医療関係職と事務職員等との間等での役割分担の推進について」(平成19年12月28日医政発第1228001号)の通知が発せられ、各大学附属病院におきましては、医師等の過重労働の解消等を図るため、検討や対応を進められているところと存じます。
 本件につきましては、引き続き、適切な役割分担の推進がなされるべきと考えており、同通知に掲げられている役割分担の例示めうち、看護師等による静脈注射の実施については、平成14年9月30日付け厚生労働省医政局長「看護師等による静脈注射の実施について」(別添2)でも、安全性等が確保できる限り、静脈注射等について医師の指示の下に看護師等も取り扱うことが可能であると示されています。
 また、大学院生等が診療業務の一環として従事している場合については、労働災害保険の適用が可能となる雇用契約を締結するなど適切な対応が必要であります。
 各大学附属病院におかれましては、これらの趣旨を十分に踏まえ、迅速かつ適切な対応をお願い申し上げます。
 なお、文部科学省では、これらを踏まえた各大学附属病院における医師等の役割分担の状況、特に看護師等による静脈注射の実施状況及び診療に従事する大学院生等の処遇体制について、平成18年3月より定期的に実態調査を実施してきましたが、今後も、進捗状況について把握するため、平成20年10月時点の実態調査を実施しますのでご協力のほどよろしくお願い申し上げます。


これまでは(少なくとも当方が勤務していた時期には),大学院生は「学生」として研究を行い,その「片手間」に病棟で診療を行うということになっていました。現実には「片手間」どころではなく,実質的に常勤としての労働量を要求されていましたし,新臨床研修制度が始まってからは,それまで研修医が担っていた奴隷労働のしわ寄せは,そうした大学院生を含む中堅医師がかぶることになった訳です。


文部科学省としては自分のテリトリーに関して「適正化」することで責任は果たしたかも知れません。その結果,大学院生が労働基準法を遵守して勤務し,大学病院の看護師をはじめとした医療職が静脈注射だけといわず市中病院なみに働いて頂けるのであれば,現場の状況は少しはましになるんでしょうけど,その件については厚生労働省の適切な監督のもと,現場に丸投げというご意向かと推察します。


ちなみに厚生労働省の医師の過重労働に対する見解は,

医療政策を担当する同省医政局は「医療秘書など医師を支える人材を強化することで激務の緩和をはかりたい。過重労働を報酬で解決することは考えていない」との立場。一方、全国の労基署を統括する同省労働基準局の担当者は「一般企業の名ばかり管理職問題と違い、医師不足が最大の原因。医療行政を変えない限り解決は難しい」と話す。

(cache)勤務医も名ばかり管理職 手当・シフト…改善模索 朝日新聞

とのことですから,大学院生の労働環境についても推して知るべしといったところでしょうか。それにしても労働基準局の「たらい回し」っぷりは見事です。