総合医をめぐる思惑


日本医師会がこれまで反対してきた「総合医」の資格創設に乗り出すとのことです。


「地域医療、保健、福祉を担う幅広い能力を有する医師」の認定制度(案) - 日本医師会

これまでの生涯教育制度のバージョンアップとして、「なんでも相談できるうえ、最新の医療を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる『地域医療、保健、福祉を担う幅広い能力を有する医師』」について、日本医師会が、関連3学会(日本プライマリ・ケア学会、日本家庭医療学会、日本総合診療医学会)、各医学会・医会等の協力を得て、主導的に認定を行う。


日本医師会はこれまで厚労省が進めてきた「総合医」に対しては反対し続けてきました。今回態度を一転して自ら認定制度を立ち上げる理由としては,

日医が「総合医」認定制度案を公表 - キャリアブレインニュース

今回の案について日医は、6月に出した「Q&A」で、「日医がこの問題に取り組まなければ、厚生労働省が必ず認定制度を立ち上げることになる」「厚労省が認定を行った場合は、それこそフリーアクセスの制限、人頭割り、定額払い、総枠規制に結び付く可能性がある」などと指摘。日医が主導して認定制度を創設することこそが、これらに結び付かない唯一の方策だとしている。

ということのようです。先に認定制度を立ち上げてしまえば厚労省はあきらめるだろうとの仰せですが,果たしてそんなに簡単な話なんでしょうかね。逆に厚労省にうまく利用されてしまうのではないかとか,さらに深読みすれば初めから厚労省と共謀しているのではないか,などという疑念を会員に抱かせるのではないかと心配になります。「唯一の方策」なんて言いきってしまうと,かえって怪しまれるのではないかと。


「Q&A」を読んでみると,診療報酬加算とは無関係に,「総合医」の質を担保して国民に納得していただくことが大事ということらしいのですが,それであれば,「総合医」に求められる資質を現状の体制でも保障する努力を自主的に行っているので,わざわざ資格を新たに創設する必要はない,と主張した方が筋は通っていると思うのですがどうでしょうか。


蛇足ですが,厚労省の意図する「フリーアクセスの制限」は総量規制により質を下げて医療費を抑制しようとするものですから,これには当方も反対です。ただ,当方は基幹病院の崩壊を防ぐ観点から「開業医はゲートキーパーの機能を果たすことが望ましい」と考えていますので,日本医師会の主張するようにフリーアクセスを全面的に死守することも賛同できません。負担の大きい現場については,医療を利用する側のモラルハザードを抑える意味で何らかの「フリーアクセスの制限」,例えば外来で差額を請求する類の方策はやむを得ないと思います。



おまけ:YouTube - 総合医者