屋上屋のデスマーチ


後期高齢者医療制度のシステム運用に携わる現職公務員SEさんが久しぶりにエントリを更新されていました。とりあえず生存確認ができたことは良かったのですが,現場は政治的事情による制度の変更により,さらに厳しい戦況に追い込まれている模様です。


敗戦が近い(今、戦艦大和の出撃ぐらい) - 公務員叩きに物申す!−現職公務員の妄言

国民への説明が足りなかったのは単純に自治体が説明するだけの時間を国が与えてくれなかっただけのことである。
システムも安定稼動していなかったから事務も構築できず、となれば国民への具体的な案内も出来ない。


つまり、システム面にしても広報周知にしても、平成20年10月制度開始であれば恐らく非常にスムーズにいっただろう。
そうであればマスコミに叩かれることも無く、わざわざこのような制度改悪改変も必要なかったであろう。


こうした過ちを全く反省していない。


本来であれば、制度開始後に発生するであろう初期稼動の不具合(とりわけ高額療養費といった非常に複雑な処理の)に対処し、
来るべき未曾有の複雑な処理「高額介護合算」の構築に全力を注ぐ時期である。
だが、その貴重な時間とベンダの人的リソースは制度改変への対応に全て費やされてしまった。


で、1月実施ですか。そうですか。
こんなもの絶対上手くいくはずないだろ、常考


この他にも制度に屋上屋を重ねることによる弊害を多数指摘されていますが,今年4月の騒動を思い出すだけでも,この時期に制度変更することでどういう事態が起きるかは想像するだけでも恐ろしいことです。おそらくは政治的思惑(つまり選挙対策)が背景にあるんでしょうけど,それすら効果があるのかも疑わしく思えます。制度に対する信頼を失うことを考えると,下手をすれば逆効果かも知れません。


思えば,いざ制度が始まってからようやく世論とメディアが大騒ぎをして政治が動くという展開は,今年の4月に現場が準備を整える猶予もなく制度を導入した時点ですでに運命づけられていたのでしょう。何とかできたとすればこの制度が法案として可決された時点だったんでしょうけど,百歩譲って制度が法案化されたとしても,2年の間,制度実施以降に大々的に取り上げられたような議論をする機会はいくらでもあった筈です。次の選挙で粛正を食らったとしても,議論を怠った議員の方々に同情する気にはなれません。


個人的には微力ながら何度か問題点を指摘させていただきましたが,制度が予定通り導入されてしまったあとは,殊更に煽るようなエントリを書く気になりませんでした。要は「だから言ったのに」ということなんですが…。それよりも,与えられた不充分な環境でシステムの構築に膨大な時間と労力を注いだであろう方から発せられる

最近、「もうリセットした方が良くね?」と思えてきたのは事実である。

という言葉からは限りなく深い絶望と,さらには今後明らかになるであろう問題の大きさが垣間見えているように思われます。