朝バナナダイエット

このところ外来であまりにも「朝バナナダイエット*1」について質問されることが多く,仕方なくネットで調べてみました。検索して上位にヒットするサイトをいくつか読んでみると,概要はおよそ次のような感じです。

  • 朝はバナナを好きなだけ。水を飲む。他に食べたければ15〜30分おいてから。
  • 昼と夜は好きなだけ食べる。
  • 午後の間食はOK。チョコレートや和菓子がよい。
  • 夕食は早めに。遅くとも20時までに。デザートは食べない。
  • 深夜に食べたくなったら水を飲む。
  • 日付が変わるまでに就寝。
  • 運動はリフレッシュになる程度に。


なぜバナナなのかという栄養学的な根拠がないか探したのですが,せいぜい「食物線維が多い」ぐらいしか確からしいものは見つかりませんでした。毎日朝食をバナナだけですませるという食生活はバランスがいいとはいえません。せめて牛乳を一緒に摂取するとかならまだしもと思いますが,どうやら始めに提唱された方が「乳製品は体に良くない」という考えの持ち主らしく,あえて「水を飲む」としているようです。


あえて好意的に解釈するなら,もともと朝食抜きで夕食を摂る時間も遅く,夜更かしで深夜に間食をするという生活を送っている方がこの「ダイエット」を真面目に実行すれば,少なくとも以前よりは生活習慣がましになり,結果として過剰な体重が減少する可能性はあります。ただその場合にも,単純に「3食バランスよく食べましょう」と言えばいいだけの話で,朝にバナナを食べる必然性はないことになりますが。


もっとも現実に相談される方に聞いてみると「バナナを食べていれば好きなだけ食べていいってテレビでみのさんが言ってました」程度の理解だったりします。まあ,そういう方が大勢いるからこそ店頭からバナナが消えるなんていう騒ぎになるんでしょうけど…。


その一方で,糖尿病や高脂血症などカロリー制限をすでに行っている方にとっては有害無益もいいところですが,えてしてそういった方がこうした「好きなだけ食べてやせるダイエット」に興味を持って,当方に一言相談してくれるならまだしも,知らないうちに実行していたりすると,臨床医として一種の敗北感さえ覚えます。きっと医学的根拠に基づく食事療法について十分理解していただけなかった当方の力不足なんでしょう。

参考図書

「食べもの情報」ウソ・ホント―氾濫する情報を正しく読み取る (ブルーバックス)

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*1:ほぼ定着してしまったので今さらですが「ダイエット」という言葉を減量の意味で用いるのは不正確です。