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条件整えば僻地もOK2

医療崩壊 報道


前回のエントリでツッコミを入れた「検討会の調査だと医学生の多くも、給与など条件が整えば地方での研修も構わないと回答している」の件が気になったのでソースを当たってみました。ありがたいことにうろうろドクターさんのところ厚労省サイト内の資料が紹介されていたので,ここからデータを引用します。


資料2 臨床研修に関するアンケート調査について(PDF)

問9 あなたが初期研修を行う予定の病院(あるいは行っている病院、あるいは行った病院)を選んだ理由についてあてはまるもの全てを選択しその番号をお答え下さい(複数回答)。

僻地かどうかに関係なく,研修先を選ぶ基準についての質問です。元データは見にくいので,医学生の回答(複数回答,回答人数=4,003)の全体に対する割合をグラフにしてみました。項目は割合の高い順に並び替えています。



初期研修のプログラムや指導体制を理由に挙げる回答が上位を占めることが分かります。「処遇・待遇」という回答は2割弱,地理的条件も挙げられていますが,「交通の便がよい」「大都市圏」については10%前半で,割合としては決して大きくはありません。まあこんなところかなとは思います。


次に懸案の質問ですが,

問28 あなたが医師不足地域の医療に従事することについてどのようにお考えですか(選択肢の番号を1つお答え下さい)。

これに対して70.5%の医学生が「条件が合えば従事したい」と回答しています。

問29 問28において「01 条件が合えば従事したい」と回答された方に伺います。仮に、あなたが医師不足地域の医療に従事するとしたら、主にどのような条件が必要ですか。あてはまるもの全てを選択しその番号をお答え下さい(複数回答)。

先ほどの問9と同じく複数回答(回答人数=2,822)ですが,選択肢は異なっています。同じように割合の高い回答から順に並べてみます。



これを見ると確かに「処遇・待遇」を選ぶ医学生が多いという結論になりそうです。ただし問9にあった選択肢のうち上位を占めていた「初期研修のプログラムが充実」「指導体制が充実」「多くの症例を経験できる」といった研修の質に関する項目がありません*1。したがって問9でこれらの理由を第一に挙げた多くの医学生は,不本意な選択肢を選ばざるを得ないことになり,回答が分散した結果として「処遇・待遇」の順位が繰り上がった可能性もあるように思います。


あくまで当方が邪推する限り,どうもこの質問票を作成した方が「不人気病院に研修の質など求めるべきでない」という予断を持っていたように思われてならないのですが,それでは結局のところ回答の結果は歪められてしまいます。さらにその結果をもとに「医学生は処遇・待遇さえ良ければ研修してもよいと考えている」といわんばかりの記事や社説が書かれることになり,研修病院に本来求められる「まともな研修を提供する」ことが軽んじられることになるとすれば有害無益な調査だといわざるを得ないでしょう。


 

*1:あえて選ぶとしたら「病院の施設・整備が整っている」「先端医療を修得する機会がある」あたりでしょうけど,それが研修の質といえるのかは疑問です。