レセプトデータの使い道


総理大臣の諮問機関である規制改革会議から「規制改革推進のための3か年計画(再改定)」が先日公表されました。レセプトのオンライン請求義務化に関しては自民党内にも反対意見があったようですが,結局見直しは行われず,何もなければこれが既定路線となると思われます。


資料のうち「措置事項10:医療関係 イ IT化,事務効率化」(PDF)よりレセプト関係の箇所を一部引用します。

2.電子レセプトによるオンライン請求化の確実な推進


a.レセプトオンライン請求化に関して,平成18年の厚生労働省例について
(i)オンライン請求化の期限が努力目標でなく義務であること
(ii)義務化において原則現行以上の例外規定を設けないこと
(iii)義務化の期限以降,オンライン化以外の手法による請求に対して診療報酬が支払われないことを,医療機関・薬局に周知徹底する。
その際,地域医療の崩壊を招くことのないよう,自らオンライン請求することが当面困難な医療機関等に対して配慮する。


b.オンライン請求されたレセプトに関して,医療行為発生後最長約3ヶ月かかっている診療報酬の支払までの期間を,保険者側の協力を前提に短縮すること,診療報酬点数における加算について,オンライン請求の,より効果的インセンティブとなるような見直しを実施することなど,医療機関のオンライン請求化を促す仕組み,すなわち,医療機関へのインセンティブ施策を検討する。
また,医療機関において,オンライン化に適合した請求システムが円滑に導入されるよう,請求システムの標準化,互換性,セキュリティの確保等の環境整備を図る。
審査支払機関に対し,オンラインを導入した保険者と導入しない保険者間の手数料の差を拡大させることについても併せて検討させる。

要するに決まったことなんだから今さら文句を言うな,ということですね。医療機関にインセンティブとありますが,じつは引用もとの表ではこの項目の右に「措置済」とありますから,今後新しい措置を行うつもりもない模様です。このあたりまでは想定内といえば想定内なんですが,そのあとを読んでいくとこんなのがあります。

4.レセプトのデータベースの構築と情報活用体制の整備


a.レセプトオンライン化請求化に合わせ,平成20年度末までにレセプトデータの収集・分析体制を構築し,平成23年度以降は全国のレセプトデータを収集・蓄積・活用できる体制を構築,運用する。


b.レセプトオンライン化が効果を上げることができるように,オンライン化を通じた医療情報・健康情報の収集・蓄積体制を早急に整備するとともに,例えば統計法(平成19年法律第53号)などの取り扱いを参考にしつつ,その恣意的な利用を防ぐとともに,国の独占利用を排除し,民間への開放を前提とした利用ルールを確立し,国民の健康の増進に資する幅広い分野での利用を図る。
また,医療機関において蓄積された医療情報を共有化し,効率的かつ質の高い医療提供体制を構築するため,診療記録等の医療分野における電子化された情報については,外部保存を行うことができる環境整備を進める。

「国の独占利用を排除し,民間への開放を前提とした利用ルールを確立」とはどういう意味なんでしょうか。データを解析して医療政策に活用するために民間の研究者に開放するというのであればまだ分からなくもないですが,であれば「幅広い分野」ではなく素直にそう記載すればいいようなものです。

でもまあ,普通に考えればレセプトデータを欲しがる民間の人間といえば医療保険を扱っている企業あたりでしょうし,そうしたデータが活用できるのは混合診療が解禁されて民間保険の比重が高くなる状況,ということになるんでしょうか。少なくとも,そういう考えをお持ちの方々にとっては都合のいい提言とは思います。

そう考えると「診療記録等の医療分野における電子化された情報については,外部保存を行うことができる環境整備」なんてのも意味深ですね。