冷静な対処を


社会的に大きな混乱が予想される事態が生じた場合には然るべき方々が「冷静な対処をお願いします」と呼びかけるのが常ですが,では冷静ではない対処とはどんなものなのか考えてみると例えば,ちょっとした発熱や体のだるさを自覚したとき「これはニュースでやっていたあの病気では」と動転して救急外来に駆けこむ,といった過剰反応なんかを思いつきます。さらにそれが極端になるとまだ症状もないのに抗ウイルス薬を処方しろと要求したり*1,あるいは怪しげな健康食品を大量に買いこむといったあさっての方向に走ったりすることになるのかもしれません。

そうした行動に対して自己中だとかリテラシーの低さを指摘することは勿論できますが,共通するのは「何だかよく分からないもの」に直面したときの不安ではないでしょうか。岩田先生の仰るように,「何だかよく分からないもの」に直面したときは,分からないものは分からないものとして留保しておいて,分かることに基づいた行動をとるのが「冷静な対処」ということでしょう。

とはいっても,当方を含めて多くのひとにとって分からないものをそのままにしておくというのは実際の話,強い不安を引き起こすものですし,無意識に分からないものを何とか自分の理解できる範囲で処理しようとする結果,上記のような不合理な行動をとってしまうように思えます。ただ「冷静な対処を」呼びかけるよりも意味のある方法はないものかと考えていますが,難しいです。抽象的な言葉を避けて,具体的な指示を明示するというのは多分有効なのでしょうけど,現実にはそこには誰かの責任が生じるわけで,結果に対する批判が厳しい社会では難しいのかなあという気もします。

追記(2009-05-01 07:20)

厚労大臣の会見は見ていないのですが,こちらの記事によれば冷静さを呼びかける以前のレベルみたいですね。大臣自ら冷静さを欠いてどうするのかと…。