臓器移植法案について思うこと


先日衆議院臓器移植法案のうちA案が可決されました。折衷案のD案ではなく4つの案のなかでは最も先鋭的なA案が可決されたのは当方には意外でした。衆議院の中のひとにとっては「臓器移植によって命が救われる」というメッセージが最も社会に受け入れられると判断したのかもしれません。もっとも今後参議院で修正されたり,場合によっては廃案という可能性もありますので,これが国民の「総意」として立法化されるのかはまだ未確定ですが…。

個人的には,もしこのままA案が通るとして,移植を推進する上で本人だけでなく家族の判断に委ねられる部分が大きくなるわけですから,当事者の方々ができるだけ冷静な状況で決断できるような体制を整えるのが望ましいとは思います。当たり前ですが,法律を作ればそのシステムと必要な費用や人員がどこからか湧いてくるわけではないことも考えるべきでしょう。

生死に関わる問題だけに社会の中でも意見は割れるところでしょう。A案に関しては医師でさえも決して一枚岩で賛成していません。メディアの見解もA案に対して好意的なところと批判的なところに分かれています。一つ不思議に思うのは「まだ議論が不十分」という主張をしているメディアが,これまで海外渡航移植に関する報道の際には脳死や臓器移植に批判的な意見をこれほど大きく取り上げてこなかったことです。「貴重な命が救われた」レシピエントの陰には,当然脳死と判定されて臓器を提供した誰かがいることはこれまでも今後も変わりません。遠い外国の誰かなら構わないが,自分たちが提供するのは慎重にというのは筋が通らないと思うのですがどうでしょうか。