「ルポ医療事故」を読む


ルポ医療事故 (朝日新書)

ルポ医療事故 (朝日新書)

ここ数年で大きく報道された医療事故を一つずつ取り上げて検証しています。基本的には事件のあらましを患者側目線で追う形式ですが,患者側に過剰な肩入れもせず,事故がどのようにして紛争に至りどういう決着に落ち着いたのか比較的中立的にまとめていると思いました。

話題に上った医療事故はだいたい網羅されているので,資料的な価値もありそうです。改めて見直すと,当たり前ですが医療事故といってもそれぞれに異なる背景や原因を抱えていますし,事後の対処も一様ではありません。単純に「医師の技量が不足」とか「閉鎖的な体質が問題」と一括りにできるものではないことがよく分かります。

医療版事故調の解説では,厚労省案と民主党案を比較して,それぞれの問題点を指摘しています。当方はメディアのなかの人がこの二つの案をまともに取り上げているのを初めて見ました。この部分は厚労省案をそのまま報道してきた各メディアにこそ読んで欲しいところです。また「こうあるべき」という話は別に,実現に当たっては人員・コストを確保する必要性に触れている点も良いと思います。