「急性心不全」という死因


新型インフルエンザに感染した医療従事者が亡くなったことが大きく報道されていました。たまたま目にしたテレビのニュースや新聞記事を見ても「新型インフルエンザが陽性」であったことと「死因は急性心不全」とされることは伝えていましたが,どうもよく分かりません。


脳死の話を別にすれば,人が亡くなるときには必ず心臓は止まるわけですから「急性心不全」が死因というのは「死因不詳」と同じことで,問題はそこに至る経過がどうだったかでしょう。ネット上で関連記事を探してみたのですが,北海道新聞によればどうやら病理解剖は行っている模様です。


利尻の保健師死亡 新型インフル道内初 感染者と面談 - 北海道新聞

同日夜、女性は同市内のホテルに1人で宿泊。翌30日午後2時ごろ、ホテル従業員が室内で意識を失っている女性を発見、119番通報したが、救急隊員が駆けつけた時には心肺停止状態だった。
道は31日、道立衛生研究所(札幌)での詳細(PCR)検査を実施し、新型感染を確認。稚内市立病院での病理解剖では、死因と新型との因果関係は特定できなかった。

報じられている限りでは特に高リスクでもない方が新型インフルエンザに罹患後に急死に至ったわけですから,当然その関与が疑われます。もちろん,報じられていない無関係な基礎疾患があって,感染症は単にそれを助長しただけという可能性もあります。


今回の事例で,海外での死亡例で見られるようなウイルス性肺炎などの検索は行っているのか,もしくはすでに行った上で特定できなかったのか,現時点の報道ではよく分かりません。今後国内での感染に対するリスクを適切に評価して無用な混乱を避けるためには,判明した事実はキチンと専門家の間で共有したうえで,一般の方にも極力正確かつ客観的に伝えることが大事だろうと思います。