報道ステーションを見てみました


足立政務官が出演するとのことで報道ステーションを見てみました。

新型インフルエンザの流行が進み、ワクチンの接種を多くの人が望んでいるなか、ワクチンの接種回数に関し、一部の専門家と国の意見が分かれている。専門家の意見交換会(16日)では、20歳から50歳の健康な200人に対する治験の結果をもとに「13歳以上は原則1回接種」と提案した。これに対し、厚生労働省の足立政務官は、「妊婦などの治験データがないため、1回接種と決めてしまうのは科学的証拠がない」と異論を唱えた。議論を重ねた結果、「医療従事者は1回、13歳以上は原則2回接種が」維持された。新型インフルエンザのワクチン接種回数は、1回で十分なのか、それとも2回接種が必要なのか。

【特集】新型インフル、ワクチンの接種回数は? - 報道ステーション

足立政務官と尾見氏自治医大教授のご両人のコメントを取っていましたが,足立政務官は「健康な成人以外で1回打ちでも有効という根拠はない」と従来通りの主張をされている一方,尾見氏は「新型インフルエンザは遺伝子がAソ連型と70%共通しているので,多くの人が既に免疫を持っている」として1回接種を主張されていました。


過去の流行から一定年齢以上の方は交叉免疫を持っているのではないかという「仮説」は確かにありますが,「Aソ連型と70%共通=免疫を持っている」というのはウイルス学には疎い当方にもかなり乱暴な議論に思えますし,まして多くの人はワクチンを接種しなくてもいいとも受け取れるコメントはちょっと軽率でしょう。


基本的に分からないことは分からないわけですから,国内での知見を踏まえてその都度方針を確認して必要であれば変更していけばいいと個人的には思うのですが,とにかく多くの方に接種するというメッセージが大事であるという考え方もあるのは理解できます。ただ専門家がそれを主張するのであれば,仮説と事実を意図的に混同するのではなく,あえて仮説を採用することによるリスクを説明するのが筋じゃないでしょうか。


ちなみにスタジオの古館アナウンサーとコメンテーターは尾見氏の見解に沿ったコメントで締めくくっていましたが,あの番組だけ見たらエビデンスにこだわる足立政務官が抵抗勢力と化している,と受け取る視聴者も相当いるでしょうね。邪推すればワクチン政策を巻き込んだ厚労省内部の勢力争いが繰り広げられていて,そこにメディアも一枚かんでいるということなのかも知れません。