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診療報酬明細書は全員に必要か

医療政策


中医協で詳細な診療報酬の明細書を原則として患者さん全員に無料で渡すべきであるという原案が出されました。議論はかみ合わず継続審議となったようですが,明細書を発行することじたいは誰も反対していなくて,「情報を知りたくない患者さんもいるのではないか」「発行するための負担はどうするのか」「患者さんの個人情報が漏れる心配はないのか」あたりが争点のようで,要は原則賛成各論反対といった状況です。

もともと明細書発行の義務化という話が出てきたのは,医療機関による診療報酬の「不正請求」が日常化していて,診療を受ける患者さんが自分自身でレセプトを確認して不正を監視すべきである,という流れだったと理解しています。つまり支払側からすれば医療費抑制という側面もあって賛成しているわけです。とはいってもあくまで大義名分は「情報公開」なので表立っては反対しにくいところで,結局のところプライバシーとか費用といった運用レベルでの議論となってしまうのでしょう。

そういう意味では,患者さんがレセプトをチェックすることで「不正請求」を防止できるか,といったあたりを議論したほうがいいような気がするのですが,中医協的にはそこは当然の前提となっているんでしょうか。「不正請求」といっても確信的に虚偽の請求をしているケースというのは限られているはずですが,そのあたりは他でも指摘されているので詳しくは述べません。そもそも点数の項目じたいも非常に複雑で,医療者さえよく勉強しないと分からないというのも問題かと思います。

分かりにくい原因として考えられるのは,診療報酬を設定するさいに「バランスをとるため」とか「総額を抑えるため」といった政治的理由をそのまま記載するわけにいかず,無理やり「○○を実施したため」といった名目をつけて点数化したというあたりだと思うのですが,それを知らずに(ほとんどの患者さんは知らないでしょう)素直に点数の項目を見たらツッコミどころは満載です。たとえば「外来管理加算」で懇切丁寧な説明をしたことで点数を算定しているのになんで「慢性疾患管理指導」なんていうのまで請求されているの?なんていう疑問に対して納得できる説明をするのは難しいでしょう。

個人的にどうも分からないのは,そういった複雑な診療報酬体系をつくりあげたのはまさに中医協であるはずなのに,それを公開すれば患者さんのためになると主張しているのが当の中医協委員であることです。もし患者さんの利益のために診療報酬そのものを分かりやすく改良するべきであると併せて主張するならまだ建設的な議論になりそうにも思えるのですが,そうでないのであれば,患者さんにこの複雑怪奇な点数体系を理解してもらわなくてはならないことになり,そうなるとほとんど実現不可能なことを前提にしていることになると思うのですがどうでしょうか。