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医療行為と業務上過失致死


奈良診療報酬詐欺:山本被告と医師逮捕、患者出血死関連で - 毎日新聞 cache

県警は当初、生活保護受給者に心臓カテーテル手術をしたように装い、診療報酬をだまし取ったとする詐欺容疑で山本容疑者らを逮捕。その後、不必要な手術で男性を死亡させた疑いが浮上し、傷害致死容疑での立件に向け捜査していたが、遺体が既に火葬されていたことなどから立証が難しいと判断。十分な技術や経験がなく、人的態勢も確保しないまま手術を行い死亡させたとする業務上過失致死容疑に切り替えた。


またまた患者死亡で医師逮捕 - ロハスメディカルブログ

容疑者の一人は別件での有罪判決を受け、また控訴中であるという事情はありますが、それと業過罪での逮捕は基本的に別問題です。
また、医師として患者のために最善の努力をしたか否かという点については、特別な事情がなく、報道されている内容が事実であるとするなら、自分もまた医師の一人として思うところはあります。しかしながら、それとこれとはやはり後述するように別問題です。


刑事裁判は医療事故を扱うのに適していない,ということを当方は大野病院「事件」から学びました。本来は大野病院「事件」判決後こそが刑事裁判以外に医療事故を評価する手段を講じるチャンスだったはずですが,厚労省が主導した事故調査委員案は多くの欠陥を指摘され,その間に政権交代もあっていまだに保留されたままです。大野病院「事件」の場合は,医療者から見ても瑕疵があるとは思えず,じっさい法廷でも過失は否定されたわけです。逆に言うと,医療者からみてもこれは問題があるという事例に対応する判例にはなっていないわけです。

もちろん明らかに個人の責任を問われるべき事例はあるでしょう。ただそれがどこまで個人の責任でどこまでがシステムエラーなのか,あるいは,どこまでが故意なり重過失でどこまでが不確実性によるのか,非常に微妙な判断が要求されるでしょうし,それは専門性の高い機関で行われるべきだろうと考えます。それがすべての関係者が同意する理想の調査機関であることは難しいにせよ,少なくとも現行の司法よりは専門的な判断ができることは必要だろうと思います。

個人的な心情からすると患者さんの安全をないがしろにするような医療者は容認できないですが,中村先生の指摘されるように,医療者としてこれを容認することと,そうした医療行為の判断を司法に委ねていいのかどうかは別問題です。そういった場合,大野病院「事件」のときは違って,同じ医療者として批判すべきはキチンと批判をおこない,司法の介入についても問題を指摘するという,なかなか難しい対応が必要になるでしょう。それでもこの件について何か意見を表明したほうがいいのではないかと思い,この記事を書きました。当方の認識や見解について不適切な点があればご指摘いただけると幸いです。