統合医療による医療費の抑制


「統合医療」推進へチーム設置 効果や安全性を分析 - 47news cache

西洋医学に漢方や自然療法を取り入れた「統合医療」推進に向け、厚生労働省は11日までにプロジェクトチーム(PT)を設置、効果や安全性の本格的分析を始めた。推進は民主党マニフェストで示した公約。鳩山由紀夫首相も初の施政方針演説で「積極的な推進の検討」を約束していた。

統合医療は、中国医学カイロプラクティックアロマセラピー、心理療法、温泉療法など多岐にわたる「相補・代替医療」で構成。個別の症状に応じ治療法や薬を選ぶ患者中心の医療が期待され、薬剤コストが低く医療費抑制が見込めるのが利点に挙げられる。

厚労省によると、こうした「医療」に関しては一方で、伝承による民間療法のように科学的根拠が乏しかったり、資格制度がない施術を患者が不安視したりする問題点も指摘されてきた。治療費も多くの場合、健康保険が適用されていない。

厚労省は5日に関係部局によるPTの初会合を開き、2月下旬までに近年扱った統合医療に関する要望書や予算事業、研究課題などを抽出することを指示した。関係課は大臣官房や健康局、保険局などにまたがるが、当面の窓口は医政局総務課に置くことも決めた。

総理大臣が施政方針演説という場で口にした以上官僚という立場上何かやらなければいけないわけで,まともに検証するつもりなのか,適当に聞き取りや会議を開催してお茶を濁すのかは分かりませんが,いずれにしても統合医療というものに社会の関心がいい意味でも悪い意味でも集まるのは確かでしょう。

統合医療に含まれるいろいろな「治療」がほんとうに有効なのかという課題はもちろんあって,議論すると本一冊でも足りないくらいですが,それとは別に,この記事では「薬剤コストが低く医療費抑制が見込める」なんてさらっと書いてあるのが気になります。ということは単純に標準治療に代替医療を上乗せするのではなく(それだと医療費は抑制できません),標準治療を代替医療に置き換えていくという前提の記事なんでしょうか。

確かに薬剤の原価は安いのかもしれませんがそこには有効性や安全性を確保するためのコストは含まれていません。正式に採用するなら当然有効性や安全性が求められるわけで,そこを無視するのでない限り,薬剤コストも上昇するはずです。…というか,代替医療の「薬品」とか「医療機器」の売値って現時点ですでに結構高いのもあるようですが。

標準治療と比べて有効性や安全性が低ければ,病気によってはむしろ重症化して余分にコストがかかる可能性も大いにあります。深読みすれば,長期的に医療の質が下がって長生きしなくなれば全体としては医療費抑制になる,という発想なのかもしれませんが,総理大臣は「健康寿命を伸ばす」と言い切っている以上そういう意図ではないですよね。そう考えると,「医療費抑制が見込めるのが利点」なんて話をいったい誰が挙げたのか,とても不思議です。