診療明細書についての院内掲示


4月から廃止された電子化加算(3点)の代わりということで新設となった明細書発行体制等加算(1点)ですが,これを算定してもしなくても明細書は原則として患者さん全員に発行することが義務付けられています。


医療費の内容の分かる領収証及び個別の診療報酬の算定項目の分かる明細書の交付について(PDF)

3 電子情報処理組織の使用による請求又は光ディスク等を用いた請求により療養の給付費等の請求を行うこと(以下「レセプト電子請求」という。)が義務付けられた保険医療機関及び保険薬局については、明細書を即時に発行できる基盤が整っていると考えられることから、領収証を交付するに当たっては、正当な理由がない限り、明細書を無償で交付しなければならない旨義務付けることとしたものであること。その際、病名告知や患者のプライバシーにも配慮するため、明細書を発行する旨を院内掲示等により明示するとともに、会計窓口に「明細書には薬剤の名称や行った検査の名称が記載されます。明細書の交付を希望しない場合は事前に申し出 て下さい。」と掲示すること等を通じて、その意向を的確に確認できるようにすること。院内掲示は別紙様式7を参考とすること。

発行にともなう事務経費の持ち出しを考えるとこうした加算も算定していくという判断になるのでしょうけど,やはり釈然としないものはあります。明細書義務化については以前のエントリで述べたとおり,患者さん自身が診療報酬請求に「不正」がないか監視するという目的があるわけですが,これは本来であれば保険者なり医療行政にあるはずの説明責任を患者さんと医療機関に丸投げしたとも言えます。


で,上記通達に示された院内掲示の参考例を見るとなかなか味わい深いものがあったりします。

平成○年○月
▲▲病院


「個別の診療報酬の算定項目の分かる明細書」の発行について


当院では、医療の透明化や患者への情報提供を積極的に推進していく観点から、平成○年○月○日より、領収証の発行の際に、個別の診療報酬の算定項目の分かる明細書を無料で発行することと致しました。
明細書には、使用した薬剤の名称や行われた検査の名称が記載されるものですので、その点、御理解いただき、明細書の発行を希望されない方は、会計窓口にてその旨お申し出下さい。

医療事務向けの難解な専門用語が羅列された文書をそのまま渡すことが「医療の透明化」ではないと思うのですが,それでも「積極的に推進」していくと主張し「発行することと致し」たのは厚労省の諮問機関である中医協であって,けっして「当院」ではありません。そして現在の診療報酬体系が患者さんだけでなく医療側にとっても難解かつ不合理となっているのはその中医協における合意の結果なのです。

まあ,以前にコメント欄でもご指摘頂いたとおり,診療報酬体系が想定している医療行為が,実際に必要な診療といかに乖離しているか,そのために医療側が診療報酬を請求するさいに苦労しているかという点がこれまで患者さんの目に触れなかったのは確かですし,今回の明細書発行によりそのことが認知されることは決して悪いことばかりではないのかもしれません。

そのことを踏まえて,院内掲示例を極力尊重するかたちで補足追加してみましたがどうでしょうか。

平成○年○月
▲▲病院


「個別の診療報酬の算定項目の分かる明細書」の発行について


当院では、医療の透明化や患者への情報提供を積極的に推進していくことで不適切な診療報酬を患者さんご自身で点検して頂くという観点から出された厚生労働省の通達に従い、平成○年○月○日より、領収証の発行の際に、個別の診療報酬の算定項目の分かる明細書を無料で発行することと致しました。
明細書には、使用した薬剤の名称や行われた検査の名称、各種加算・管理料など項目が医療保険事務そのままの表記で記載され、場合によってはその内容が非常に分かりにくくなっています。分かりにくい点については診療報酬請求で定められた規則にしたがったものですので、その点、御理解いただき、納得できない点については当院で可能な範囲でご説明致しますが、当院としてもすべての規則についてその根拠を把握するところではありませんので,その場合は保険者または厚生労働省担当課へお問い合わせ頂けると幸いです。なお、明細書の発行を希望されない方は、会計窓口にてその旨お申し出下さい。