改めて臨床研修制度を考えてみる


2004年から始まった臨床研修制度に対する評価は,いまだに定まっていないように思えます。予想された効果あるいは欠点がじっさいにどうなったのかは,こうだろうという理屈とはまた別に,できるだけ実証的に評価するべきなんでしょう。もちろん評価しようとする試みはされているんでしょうけど,外部から専門的評価を下すのは難しく,当事者による内部評価についてはその立場によるバイアスが避けられないような気がします。そういうわけで,以下で述べるのはあくまで当方の個人的印象です。

研修のレベルに関しては,あくまで以前に比べればですが,いい意味でも悪い意味でも標準化されたと思われます。もともと充実した研修を提供していた施設にとっては足を引っぱるだけですが,そうでないところはまともな環境に近付けないと研修医から見放されます。評価するためには,新しい制度と比較すべき対象に相当なバラツキがあることを念頭に置く必要があるでしょう。

研修を受ける側の評価も,現制度以前にせよ以降にせよ,あくまで自分が受けた研修を基準に判断することでバイアスがかかってしまうのは避けられません。当方自身,どうしても新制度に関しては批判的になってしまう傾向は自覚しています。新制度以降の世代に話を聞くと,当方が懸念しているようなことは意外にも問題とされていなかったりして,こちらもいろいろと認識を改めるところがありました。

社会的影響としては,医局による医師派遣能力が大幅に低下したことで崩壊に追い込まれた病院も多数あって大問題になり,いわゆる「医療崩壊」の犯人と見なされもしました。ただこれに関しては,これまでに積み重なっていずれ破綻するはずだったさまざまな矛盾が表面化する契機になったに過ぎず,必ずしも主犯ではないとみることもできます。そもそも「崩壊」を食い止める必要があるのかという議論もあったりと,ネットでの論調も含めて医師のあいだでも価値観の変遷は生じているともいえます。

某所での話題をきっかけに少し考えてみましたが,やはり一つのエントリにまとめるには無理があったみたいですね。かなり抜けているところもありそうな感じです。あとはやはり,当方のバイアスを修正する意味で新制度以降の立場から見解を頂きたいところです。