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尊厳死の法制化

医療と司法 私見


尊厳死法制化で議連が骨子まとめる - 日経メディカル

 骨子では、終末期や延命措置について定義。終末期を「全ての適切な治療を受けた場合であっても患者に回復の可能性がなく、かつ、死期が間近であると判定された状態」とした。延命措置は「傷病の治癒ではなく生存期間の延長を目的とする医療上の措置」とし、栄養補給や水分補給も含めることを示した。ただし、終末期と判断される前から行われている治療は、延命措置に含まない。その上で、患者の意思を尊重して延命措置を差し控えることができ、その差し控えについて医師は民事や刑事、行政上の責任などを問われないとした。

簡単に結論が出せない問題ではあるのでしょうけれど,医療側だけでなく患者さんの側からも延命治療を続けるべきでないケースについてはやめてほしいという要望が出てくるようになった昨今では,法令と現実の乖離が無視できなくなっているのも確かです。

不可逆的な疾患の進行のなかで積極的治療を差し控えて重心を苦痛の緩和へと移行していくのはなにも特別なことではないと個人的には思います。しかしながら形式上は,生命を維持するための治療を中止することは,他にいくら急変する要因があったとしても,患者さんの死に関与するという意味において「殺人」と見なされる,ということのようです。法的には,関与したことと死が関連しないと主張するよりも,形式的には「殺人」だとしても違法性が阻却される理由がある,という理屈のほうが殺人罪を免れる可能性が高いようです(解釈が誤っていたらご指摘下さい)。

違法性が阻却される要件としては名古屋安楽死事件判決で示されたものが有名ですが,今後この要件に該当するかどうか判断するためには,改めて刑事裁判となり判決を待たなければいけないということになってしまいますし,それではあまりにも社会的・精神的損失が大きすぎるでしょう。そういう意味でも,免責される要件を法制化しておくことが望ましいとは思います。

具体的には「終末期とは何を指すか,そしてどのように判定するか」と「終末期と判定されたうえで,どのような手続きを踏んで延命治療を中止するか」という点が主に問題になると思いますが,

 延命措置差し控えまでの具体的な流れも盛り込んだ。まず、担当医以外の知識や経験を有する医師2人以上が終末期を判定。差し控えによって生じる事態を患者や家族に説明した後、それでも拒まない場合などに、延命措置を差し控えてもよいとした。

「終末期の判定」をかなり厳格に規定しようという印象です。もちろん必要以上に延命治療が中止されることを懸念してのことでしょうけど,現実問題としてはこの骨子を素直に受け取ると複数医師が関わる病院(それも比較的大きい施設)でないと要件が満たせないわけです。それなら嘱託医一人の特別養護老人ホームとか,在宅医療を受けているケースではどうなるんだろうという疑問は当然出てきます。まさか判定のためにすべて入院するというわけにもいかないと思うのですがどうするんでしょうか。違法性が阻却される要件が求められるという点では変わらないと思うのですが…。

終末期の判定が(あくまで施設の条件的には)厳しい割には,そのあとの手続きが結構大雑把なのも気になるところです。あくまで骨子なので具体案はこれからなんでしょうけど,説明と同意のプロセスこそ明確にしておかないと,それこそ憂慮されているように,必要以上の治療差し控えが現実になってしまうような予感がします。骨子の段階でいうのも何ですが,個人的には「終末期の判定」と「延命治療中止の手続き」のうち前者に比重が置かれすぎてバランスが悪いように感じますが如何でしょうか。皆様のご意見をお待ちしています。