長谷川和夫先生と認知症

認知症診断の生き字引的存在といえる長谷川和夫先生が認知症と診断されたニュースは一昨年あたり耳にしていましたが,今回ご自身でその経緯を本にまとめられました。 

認知症(当時は「痴呆」)診断の歴史とか,長谷川式スケール開発の裏側といったトピックも面白いのですが,なによりタイトルにもある,当事者としての認知症との向き合い方が本書の主題だと思います。長谷川先生自身,認知症の症状がこれほど変動するとは専門医として考えていなかった,と仰っている通り,当事者でないと分からないこともたくさんあるのでしょう。

何かを決めるときに,ボクたち抜きに物事を決めないでほしい。ボクたちを置いてけぼりにしないでほしいと思います。

第3章 認知症になってわかったこと p69 

このあたりは意思決定支援とかパーソンセンタードケアといった概念は知っていても,当方自身が本当の意味でやるべきことをやっているのかを問われている気がしました。

つい先日はNHKスペシャルでも取り上げられていました。

こちらは長谷川先生を支える奥様や娘さんとの関わりを中心とした構成で,病状の進行が容赦なく映像に捉えられていることもあって著作とはまた違う印象でしたが,それでも「認知症になっても見える風景は変わらない」というメッセージは共通しているのだろうと思います。