適者生存

北海道の中でも特に豪雪地帯と呼ばれる地域に勤務していたのですが,ただでさえ身体機能の低いお年寄りにとって降雪期はまさにサバイバルでした。ただでさえ感染症のリスクが高いのに加え,外出すれば転倒→骨折,家にいても脱水→脳梗塞という感じで,外来患者さんが次々とドロップアウトして長期入院あるいは施設入所していくわけです。

そう考えると90歳を超えてもそうした試練をくぐり抜けて徒歩通院している方というのはある意味超人に近いと思います。処方内容もアダラートとガスターだけだったりして,ぶっちゃけて言うと病院に来る必要もないほど健康体。これからの医療崩壊を生き残るのはそうした方々ぐらいなのかも知れません。

豪雪が高齢者の廃用症候群を招く 日経メディカル オンライン 2007/2/5

 豪雪災害によって、運動や歩行などが困難になる廃用症候群に陥る老人が約2割いる──。こんな調査結果が、厚生労働省研究班の調査研究によって明らかになった。このうち3割近くは、数カ月経過した時点でも身体機能が回復しておらず、高齢化が進む豪雪地帯での対策が求められる。

調査したことは興味深いと思いますが,厚生労働省がこの調査結果を受けて対策を立てることなんてないと断言できます。というか不可能です。手っ取り早いのは集団移住なんでしょうけど,現実には自宅内で行き倒れて死の淵を彷徨ったというのに都市部で同居を勧める子供を頑として拒否する独居老人を説得するだけでも一苦労でした。お年寄りの故郷に対する執着というのは侮れません。

以下は記事本文。

豪雪が高齢者の廃用症候群を招く
2割が歩行困難に、厚生労働省研究班で明らかに

 豪雪災害によって、運動や歩行などが困難になる廃用症候群に陥る老人が約2割いる──。こんな調査結果が、厚生労働省研究班の調査研究によって明らかになった。このうち3割近くは、数カ月経過した時点でも身体機能が回復しておらず、高齢化が進む豪雪地帯での対策が求められる。

 調査は、国立長寿医療センター研究所(愛知県大府市)生活機能賦活研究部長の大川弥生氏が中心となって研究している「生活機能向上に向けた介護予防サービスのあり方および技術に関する研究」の一環で行われた。昨シーズンに大雪災害に見舞われた富山県南砺市で、介護保険制度における「要介護」「要支援」の認定は受けていない65歳以上の高齢者を対象に、豪雪前と豪雪後で、屋内外での歩行機能がどのように変わったかを調べた。

 調査は聞き取りで行い、3080人が回答。約2割に当たる645人が、「屋内または屋外で歩行することが難しくなった」と答えた。さらに、そのうち約3割に当たる190人は、豪雪から数カ月経過した時点でも「豪雪前の状態に戻っていない」と答えた。

 廃用症候群は一般的に、骨折や脳卒中などの疾患によって動くことができなくなり、そのまま体の機能が衰えて発症すると考えられている。しかし、家の外に出られなくなる豪雪災害で発症するケースも軽視できないことが分かった。

 調査結果を受けて大川氏は「廃用症候群は疾患の合併症だけでなく、周囲の環境の変化でも多く起きる」と強調する。対策として、2004年度に作成した「生活機能低下予防マニュアル(http://www.imcj.go.jp/shizen/index.htmlの74ページ以降)」の活用を、地域の保健師にアピールしていくとしている。

(野村 和博=日経メディカル)