お前が言うな!


昨今の医療に関する秀逸なまとめがあったのでご紹介します。

医療費抑制策の結果 日本の医療は崩壊寸前

 「日本医師会グランドデザイン2007ーー国民が安心できる最善の医療を目指して」を作るために国民の意識調査をしたところ、治療中の方々は医療に満足している反面、健康な方々は将来に不安を抱えていることがわかった。
 医療の側では、病院の勤務医に大きな負担がかかっている。雑務や当直業務、外来診療に追われ、研修や、最先端の先進医療を身につける時間が減っている。1990年代に病院に外来患者が集中したために、診療所の機能が低下し、その果てに病院も限界を迎えつつある。それが現在の状況ではないか。
 国は医療費抑制ありきだ。このままだと、本当に粗末なレベルの医療になってしまう。ガンの手術でも「3か月待ち」になりかねない。今でも他の先進国と比べた場合、医師も看護師も医療費も圧倒的に少ない。
 医療は国民の財であり、当然受けるべき福祉である。日本の経済力や科学文化の水準から考えて、国民は一定水準の医療を享受できて当然だ。そのためには財源がいくら必要なのかという順番で考えないと、医療制度は崩壊してしまう。

 医療費は02年の診療報酬ゼロ改定以降、不思議と財政中立(差し引きゼロ)が大前提となっている。病院の7対1看護問題でも、ある分野に手厚くする代わりに別の分野を省くから、省かれた方が崩壊する。
 診療所に対しても今後、「夜間診療は手厚くする代わりに初再診料は下げる」という財政中立の方策をとるのであれば、昼間だけの診療所は成り立たなくなる。地域医療は多彩であり、中央官庁がスイッチ一つで誘導するのは危険だ。
 75歳以上の後期高齢者の医療費負担も、所得の多寡で区別する現状は好ましくない。75歳を過ぎた方々は、国民全体で支えるべき。それこそが福祉国家の姿だと思う。
 後期高齢者医療制度を安定的なものにし、終末期医療や緩和ケアのシステムを構築するためには、最終的に9割を公費で負担する仕組みが望ましいのではないかと提言している。それが実現すれば、国民健康保険政府管掌健康保険の財政立て直しにもつながる。消費税を上げなくても、約270兆円の特別会計と80兆円の一般会計を精査すれば、5〜6兆円レベルの財源は捻出できるはずだ。適正な財源を医療に振り向けることは、経済の活性化はもとより、(国民の福祉増進という)国の理念の具現化にもつながる。高齢者の不安感を取り除くことや、少子化問題の解決にも寄与するだろう。
 (経済界には)規制緩和によって医療を市場メカニズムにゆだねるべきとの意見もある。そうなれば医療費は現在の30兆円から100兆円に膨らむかもしれない。問題はそのおカネを誰が負担するのかだ。
 過去の日本医師会には、政府に反論するだけの理論も資料も迫力もなかった。今ならば「こういう国作りをしましょうよ」と言える。


インタビューから文章に起こしたものですが,この発言の主は他でもない日本医師会会長,唐澤祥人先生その人なのでした(週刊東洋経済より)。これほどの見識をお持ちの方ですから,医療者を代表して厚生労働省に言うべきことをビシッと言って下さったはず。ここ最近日本医師会の公式コメントが厚生労働省と区別がつかなくなってきたのはきっと当方の認識不足でしょう。最後の「こういう国作りをしましょうよ」という言葉が力強い限りです。


そういえば市医師会から「国や日本医師会への要望をお願いします」というアンケートが来てました。この際ですから率直な意見をFAXしてみるのもいいかもしれません。