外来コンシェルジュ


いわゆる「3時間待ちの3分間診療」と言われる状態を改善する方法はあちこちで議論されているところですが,解決策として交通整理する人員を配置すればいいのではないかという意見は当然あるかと思われます。それを実際に導入した試みです。


医療現場にも『コンシェルジュ』 患者の代理人としてサポート(cache)
中日新聞 2007年6月8日

 名古屋大付属病院では、地域の登録医(開業医)から紹介された患者を対象に同年六月スタートした。開業医から紹介状・検査データ・健康保険証のコピーなどを事前に送ってもらい、コンシェルジュがその内容から受診科を決定。担当医と相談して、スムーズに検査ができるように手配する。

 受診当日はコンシェルジュが作成した行程表に添って、患者は動くだけ。既に診察カードなどもできていて、待ち時間も少ない。同院での調査では、初診受け付けから診察開始までの時間が、コンシェルジュサービスを利用した場合、平均七・二分(最長でも十五分)だったのに対し、利用しない場合は平均六七・一分。最も待った人は六時間だった。

 コンシェルジュ電子カルテを確認していて、予定より検査などが遅れそうな場合は、説明に行ったり、ほかの検査を先行させたりする。患者の希望によっては医師の説明に同席もする。


単純に待ち時間が1時間強から7分に短縮したのであれば素晴らしい効果です。とはいえ,コンシェルジュがこの病院に何名配置されているのかこの記事では分かりませんが,上記の対応であればコンシェルジュ一人あたり誘導できる患者数には限界があると思われます。コンシェルジュが誘導した一部の患者さんの待ち時間が短縮した分だけ,他の誰かの待ち時間が増えていることになるわけです(極端な話,6時間待ったのはもしかしたらコンシェルジュのせいかも知れません)。

こうした誘導が重症度に基づくのであればトリアージということになるんでしょうけど,そうではなくて単純に開業医からの紹介患者を優先しているだけですから,結局は紹介状を持参しない方に対する間接的なアクセスの制限ということのように思えます。ある程度専門性の高い施設であればそれはそれで一つの方法ではあるのかも知れませんが。

今回の記事に限らず,病院の外来にはまだまだ非効率な面があって,システムを最適化することによって待ち時間を減らせる,ないしは減らせなくても満足度は上げられると主張される方は少なからずおられるようです。たしかに工夫すべき点は多くあるでしょう。

ただ思うのは,待合室で長時間待っている患者さんの一方で,病院に行きたいけれど混雑しているから行きたくない,という方も一定数いらっしゃるわけです。外来の待ち時間が軽減されたとしても,それに応じてこれまで病院に足を運ばなかった方が来院するようになり,現場の負担だけが増大して混雑は今まで通り,という結果は十分に予想できます。

何を言いたいかというと,アクセス制限をしないで病院のシステムをあれこれいじっても本質的な解決にならないのではないか,ということなのです。いずれ医療崩壊に伴って医療へのアクセスが急速に悪化するでしょう。ある日突然アクセス不能となってパニックに陥る位であれば,早いうちにフリーアクセスに対して何らかの制限を加えるほうが数段ましだと思います。とはいえ具体的にアクセスを制限する方法が問題なのですが。