撤収準備


かつて北海道新聞が医師の名義貸し追求のキャンペーンを張ったことがありました*1。発端は札幌医大某医局の関連病院だったのですが,他の医局にも同じような事例があることが明らかになり,北海道新聞の社会面に毎日のように「名義貸し」の文字が躍っていたことを記憶しています。名義貸し追求の余波は札幌医大のみならず道内の他大学にも,さらに道内のみならず全国の大学にも波及し始め,全国紙にも取り上げられ始めるのですが,追求の火の手が全国に広がろうとした頃になぜか北海道新聞の報道はトーンダウンします。名義貸しが当初報道されていたような個人的な不正行為ではなく,構造的な問題が背景にあることが明らかになってきたこと,追求を続けることで生じる社会的影響があまりにも大きくなることが予想されたということもあるでしょうけれど,個人的にはそもそも北海道新聞の手には余る問題だったのだと思っています。


先日より毎日新聞医療クライシス第3部(cache)が始まっています。内容については連載の途中なので評価するのは控えますが,これまでと違い取材はせずに「識者」の意見を論評抜きで掲載するという形式。実は北海道新聞が「名義貸し」キャンペーンに幕を引くときにこれと全く同じ手法を用いています。当時は新聞のサイトを保存しておくという発想もなく記事が手元にないのですが,要するに「いろいろな問題点があり今後さらなる検討が必要」というまとめ方でした。深入りして社会的影響が拡大することを考えればある意味良心的なのかも知れませんが,問題提起するだけしておいてそんな思考停止なまとめ方でいいんだろうかとも思えます。


そういう意味でも毎日新聞が「医療クライシス」シリーズにどうやって決着をつけていただけるのか*2楽しみではあります。仮にも社説として掲載した新聞社としての見解があるわけですから,その見解は現時点でも変わらないのかどうかぐらいは明らかにしていただきたいところです。

*1:北海道外で経過をご存じない方はこちらをご参照下さい。なお北海道新聞サイト内の名義貸し関連記事は現在閲覧不能です。

*2:まだまだ連載が続くという可能性もありますが。